京都大学 大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻、理学部 地球惑星科学系

MENUMENU

松崎和也さん(産業技術総合研究所 計量標準総合センター)

地球惑星科学専攻での研究を通して

産業技術総合研究所 計量標準総合センター 松崎和也
(2013年度地球惑星科学専攻修士課程修了)


写真:産総研の実験室にてX線CTのデータ解析をしている様子

系登録で地球惑星科学系を選んだきっかけ
大学入学当初にはまだどこを専門にしようとは決まっていませんでしたが、1年生・2年生時に基礎科目を一通り履修してゆくうちに、高校とは違う大学での勉強について、少しずつ見えてくるものがありました。もともと化学と生物はあまり得意ではなくて、数学・物理・地球物理学を中心に学んでいたのですが、そのなかで一番面白いと思ったのが地球物理学でした。

学部時代の生活
私はヨット部を学部1年から4年の夏まで続けていて、週末は琵琶湖で活動していました。4年生前期の研究室配属された当時はまだ部活を続けていたので、平日に研究室、休日に部活という形で過ごしていました。

測地学研究室を選んだきっかけ
3年生時には課題演習があって、そこで後期に測地学の実習を選択しました。4年生時には福田洋一先生(現 国立極地研究所 特任教授)から話を伺うなかで、南極の研究が面白そう、やってみたいと感じたことを記憶しています。

学部卒業後に大学院に進学した理由
学部で卒業して就職するということは基本的に考えていませんでした。京大の理学部に進んだからにはしっかり勉強したいという思いが学部入学時からあって、そのためには修士で2年間しっかり研究するべきだと考えていました。京大の理学部は周りにも大学院に進学する人が多いので、その雰囲気も後押しになりました。

学部4年生~大学院時の研究生活
南極観測隊が測定した「しらせ」船上での重力観測データの補正を行っていました。「しらせ」に搭載された重力計は、ジンバルという装置で常に水平が保たれるようにはなっているのですが、それでも船の揺れがあったり、重力計内部のばねが徐々に伸びてしまったりするので、真の重力からは測定値がずれてしまいます。 同じ地点を複数回測定した場合、本来なら同じ重力値が得られるはずなので、それをもとにデータの補正を行いました。そして最終的な目標としてその重力データから南極周辺の地下構造の推定を行いました。


図:各種補正を施した後の船上重力データ(松崎ほか, 南極資料, 2014

研究を進める中で嬉しかったこと、苦労したこと
研究室に配属された当時は研究自体が初めてなので、どんなペースで、どんな手順で進めるべきかのノウハウも全然なく、先生に聞くしかないという状況から始まりました。 その上で、先生とディスカッションする際にどのように聞くかというのはとても重要ながら苦労した点で、今となってはあそこはああやって聞けば良かったなと思うことが沢山あります。 ただ、私は現在も仕事で研究を続けているのですが、そのときの苦労した経験が今の研究にも活きていて、そこはとても良かったと思っています。

現在の仕事内容
産業技術総合研究所(産総研)の計量標準総合センターというところに勤務しています。様々な「ものを測る」ということを主軸に業務を行っていて。測る対象としては長さや質量といった基本的なものから、電磁波や水素の流量といったものまで多岐に渡っています。ほとんどの基本的な物理量の標準はここで定めていて、日本国内でもっとも正確にものを測ることができる、と言って差し支えないと思います。
私はそのうちの工学計測標準研究部門に所属していて、長さや角度といった幾何学的な量の測定を行なっています。現在は修士卒の研究員として勤務していて、そういった幾何学量の測定に関する研究で博士号の取得を目指しています。


写真:装置寸法をレーザトラッカで測定している様子

現在の仕事を選んだきっかけ
産総研自体はすでに地質の学会で知っていましたが、計量標準というものは当時まだ知りませんでした。民間企業の就職活動をするなかで、偶然合同説明会で話を聞く機会があったのですが、そこで修士卒で計量標準の研究職の募集をしていました。修士卒での研究職採用は当時の産総研では珍しくて、テーマも面白そうだったことに加え、大学での研究とは違った国の研究機関としての雰囲気も新鮮に感じました。業務として研究をしながら、博士取得を目指してサポートを受けれる環境も魅力的でした。

現在の仕事の中で活かされている学部・大学院時代の経験
学部・大学院時代の研究内容が直接的に業務に生かされている訳ではありませんが、目標に向かってどのように進めるべきか、リスクをどのように回避するべきか、といった考え方は変わっていないと思います。また、研究でプログラムを使って解析した経験も、業務で様々なソフトを使う上でアドバンテージになっています。

京大で地球惑星科学を研究して良かったこと
まず京大らしいところとして自由な雰囲気があったことに加え、学生間の距離が近く雑談をしやすかった環境も過ごしやすく感じました。測地学という分野は他の大学を見てもやっている研究室はあまりなくて、そういった他にないことをできる縁に巡り会えたことも良かったと思います。
またこれは指導の先生にもよるかもしれませんが、研究を行う上でまずは自分で考えさせるという雰囲気も、もちろんそれによる難しさもありましたが、今も研究機関で研究を続けている身としては良い経験になっています。

(インタビュー日:2021年1月4日/聞き手:大井川智一・風間卓仁)

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