地球惑星科学専攻 地球科学輻合部特別講演会

日時: 2010年3月1日(月) 14:00 - 16:00
場所: 京都大学理学部1号館 462号室
題目: 地震波干渉法を用いた震源間を伝わる実体波の抽出 −観測波形と合成波形による検証−
講演者: 利根川 貴志 氏 (東京大学地震研究所)

講演要旨:
近年、地震波干渉法を用いて2つの観測点間の伝播特性を抽出する
ような研究が精力的に行われてきているが、最近これまでの研究と
は異なった、2つの震源間の伝播特性を抽出するような研究がいく
つか報告されている(e.g. Hong & Menke 2006; Curtis et al. 2009)。
しかし、上記の研究で用いられている地震は浅発地震であり、表面
波の影響が大きく残っている。本研究では、深発地震を用いること
で2つの震源間を伝わる実体波の抽出を試みた。
<手法・データ>
イベントは、伊豆・ボニン下の深発地震で、深さは300-500 km で、
マグニチュードは4.0-5.2のものを用いた。相互相関をとる前に、
S波到達時刻から後ろ20秒間の振幅をテーパーで小さくし、S波到達
時刻より前は振幅をすべてゼロとした。そのときのS波コーダの時間
長は約200-300 秒程度である。また、相互相関関数は、周波数領域
で振幅を規格化したものを用いた。バンドパスフィルターは0.5-2.0
Hzである。コーダ波には、観測点下および震源周りの散乱体からの
波が入っていると考えられる。発表では、これらの条件下で本当に
実体波が検出されるかどうかを、合成波形を用いて検証する。
<結果&考察>
結果では、P, SV, SH波が検出されていることを示す。特に、SV,
SH波は非常に鮮明に抽出されており、P波も振幅はS波よりも小さい
が抽出されている。これらの結果において、震源間の距離が近い
場合は理論走時より早く波が到達している。これは、スラブが
IASP91よりも高速度であることを反映したものである可能性が高い。
本研究で用いたイベントがM~4級であることから、この手法は
比較的マグニチュードが小さいイベントにも適用可能である。
この手法がうまくいけば、今後トモグラフィーや、震源の決定精度
の向上、地殻の影響を受けない波形の合成、異方性の研究など、
さまざまな研究に応用可能だと考えられる。

問い合わせ先: 平原和朗