地球惑星科学専攻 地球科学輻合部特別講演会
 
講演題名:
蛇紋岩のレオロジー
 
講演者: 
高橋 美紀
(産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター)
 
日時: 2011年2月23日(水) 14:00〜15:30
場所: 京都大学理学部1号館5階563号室
 
講演概要:
 沈み込むプレート境界やトランスフォーム断層沿いに蛇紋岩が存在することが,地震
波トモグラフィーや地質学・岩石学的な研究から指摘されている.また近年,ゆっくり
地震は沈み込む海洋性スラブと蛇紋岩化したウエッジマントルが接するところで発生
していることが明らかになり,蛇紋岩の断層・地震活動における役割の解明は急務となっ
てきた。それでもまだ,蛇紋岩の摩擦すべり特性に関するデータの蓄積は地震断層活動
の実体を理解するには不十分である。
 我々(高橋・上原・溝口・増田)は高温型蛇紋石のアンティゴライトを対象に4桁の速
度レンジ(約36 cm/年 – 約1 m/日に相当)と600℃までの温度条件について摩擦速度依存
性を調べたのでご紹介したい。今回の実験の主な成果2点を以下に示す。
 1:蛇紋岩のレオロジーは複雑ではあるが,温度・速度に対する系統的な実験と注意深い
解析により,摩擦・流動を構成する構成パラメータを実験領域に対してマッピングする
ことができた。
 2:温度450℃より,若干量の脱水反応が起きることがわかった。またこの温度条件は,剪
断挙動が流動タイプから摩擦タイプへと急変する条件に一致する。観察より脱水反応
は摩耗や剪断が集中する領域に優先して起きている。剪断による脱水反応の促進と,そ
れらが断層全体の強度・挙動を支配する様子を捉えることが出来た。
 
問い合わせ先:
久家慶子