京都大学21世紀COEプログラム 活地球圏の変動解明 アジア・オセアニアから世界への発信

KAGI21_logo

多目的観測サイトの活動:北京大学との交換現地教育プログラム:「大陸と島弧の発達過程の比較教育」報告

竹村恵二・頼 勇・平島崇男・山本順司・西村光史・大塚和彦

 7月21日から28日まで,標記の北京大学との交換現地教育プログラム「大陸と島弧発達過程の比較教育」を実施した.北京大学からは潘 懋・魏 春景の2教授をリーダーとして8名の学生が参加した.日本側は,現在京大地球熱学研究施設に客員助教授として滞在中の頼勇北京大学助教授,竹村恵二・山本順司・西村光史(地球熱学),平島崇男・大塚和彦・高谷真樹(地質学鉱物学教室)が参加した.今回は,大陸と島弧の発達過程を現地で見学・比較して,議論する国際交流プログラムのテストケースとして,KAGI多目的観測サイトのプログラムとして実施された.日本側で企画した教育プログラムであり,島弧特有の活地球圏や物質循環の最前線を意識した内容を意図した.初日は夕方に別府に到着し,地球熱学研究施設を見学後,学生は地球熱学研究施設内に宿泊し,日本での最初の夜を過ごした.第2日目は,別府周辺で地熱温泉活動を見学した(写真1).別府地域に広がる湯煙・地熱地帯,伽藍岳の泥火山,さらに溶岩の割れ目を浸透した湧水や滝を見学し,夕方は日本式の温泉にも挑戦した.火山・地熱地帯の展開される様相は学生たちに刺激的であったようだ.第3日目は九重・阿蘇地域を訪れ,火山活動・地熱発電・火山岩・火砕流など活発な火成活動の一端を感じ,阿蘇火口見学では,火口立ち入り禁止寸前に火口に近づくことができる幸運があったものの急なSO2ガスにより,強い咳き込みを体験した(写真2).第4日は早朝別府を発ち,四国へ渡り,中央構造線の地形と三波川の高圧変成岩を見学(写真3),第5日は愛媛県筏津から高知県汗見川に移動して,御荷鉾帯と秩父帯の変成岩を見学、大杉から中央構造線に沿って徳島まで移動し,徳島県立博物館に到着.博物館で,四国や中央構造線についての展示を使って復習をした後,淡路島へ移動した.第6日は,まず1995年阪神・淡路大震災を引き起こした野島断層の地表変状を保存した天然記念物の断層保存館で,2時間にわたり,活断層の見学を行った(写真4).その後神戸を経由して、京都大学へ到着.COE事務局で淡路事務局長と面談後(写真5),地質学鉱物学教室で,物質科学関連の機器等の見学を実施した.第7日は京都で1日を過ごし,翌28日関西国際空港から北京へ向かった.
 学生達は,京都の夜に今回の巡検時の貴重な体験に基づく意見を披露してくれた.日本列島に展開する活地球圏や,大陸と比較して新しい地質時代の物質循環の様相を見学し,地球科学の多様性を感じてくれたようだ.
 来年は日本からも,中国大陸に広がる安定大陸の発達過程の諸課題を院生・学生が見学するプログラムを構築できるように準備をすすめることを相談しており,今後関連情報をまとめていくことを予定している.興味ある方は,竹村・平島まで連絡ください.

20050721-0000_a0001.jpg
写真1 別府明礬湯の花小屋の前での集合写真(7月22日)

20050721-0000_a0002.jpg
写真2 阿蘇火口にて(7月23日)

20050721-0000_a0003.jpg
写真3 三波川変成岩観察へ向かう一行(7月24日)

20050721-0000_a0004.jpg
写真4 野島断層保存館(7月26日)

20050721-0000_a0005.jpg
写真5 COE KAGI事務局訪問(左から:淡路,竹村,潘懋,魏春景)

© Copyright 2003-2005 KAGI21 All Rights Reserved .