京都大学21世紀COEプログラム 活地球圏の変動解明 アジア・オセアニアから世界への発信

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多目的観測サイト(阿蘇) 観測地球物理学演習報告

田中良和、鍵山恒臣、須藤靖明、大倉敬宏、内藤陽子、宇津木充

 2005年8月2日から8月5日にかけて、阿蘇火山でのフィールド実習が行 われた。この実習では、雄大なカルデラ地形を持ち、現在活動が活発化してき ている阿蘇火山で、対流圏から地殻上部までの地球表層の領域を対象として、 その構造やそこで生じる現象を探るための様々な調査、観測法を実践すること で、自然現象から情報を得る方法とその限界等について実感してもらうことを 目的としている。実習には他学部からも含め、11名の学生が参加し、教員 6名、技術職員2名(吉川慎、井上寛之)および研究員1名(後藤秀作)で指導 した。
 初日は資料の配付とともに実習の概要説明が行われた。同時にヘルメ ット、ガスマスクが配布され、参加者の緊張感が高まる(写真1)。そして、 翌日以降の「天気を読み」、実習のスケジュールを確定した。
 2日目は「風を測る」実習を行った。セオドライト(経緯儀)を使って 上昇するパイロットバルーンを追いかけ(写真2)、仰角と方位角を測定す る。雲の影響で10分程度しか追跡できなかったが、当初北西に向かって飛んで いったバルーンが次第に東向きに流されていく様子が記録されている。阿蘇山 は雄大なカルデラ地形を持つことで知られている。その中での地表付近の風が 複雑である様子を垣間見ることの出来る結果となった。昼食後、火口近くにあ る観測坑道の見学を行った。地下30mにある坑道には水管傾斜計、伸縮計、広 帯域地震計などが設置されている。そして、夕立が降り出す前にセンターに戻 り、データ整理と翌日ために水準測量の練習を行った。
 終日好天に恵まれた3日目は二班に分かれて「大地を測る」実習およ び「地下を測る」実習を交互に行った。水準測量およびVLF観測による大地比 抵抗探査である。水準測量では、作業は単純ではあるが、精密に2点間の高さ の差を測定出来る。炎天下、行楽客や牛を尻目に黙々と作業を行い(写真 3)、見事に午前班が1等水準路線の誤差範囲に収まる結果を残した。VLF観測 は、さらに火口登山道路を登りながら測定するグループと山頂から下りながら 測定するグループに分かれた。歩きながら、数100mおきに比抵抗を測定し(写 真4)、火口に近づくにつれて比抵抗が低下していく様子を実際に確かめるこ とができた。調査の途中では、火山弾に残されたマグマの発泡の痕跡の観察や 火口内の噴気活動の観察も行った。なお,比抵抗調査の際には、測定位置も簡 易GPSで同時に測定した。簡易GPSの使用は、比抵抗調査のみならず、フィール ド調査で汎用的に使用できるスキルである。
 最終日はセンター内の見学、データ整理およびレポート課題の説明が 行われ、無事4日間の実習が終了した。

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写真1:ガスマスク装着の練習

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写真2:セオドライトで風船を追いかける。後ろは中岳第一火口

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写真3:水準測量の様子

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写真4:比抵抗調査の様子

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