京都大学21世紀COEプログラム 活地球圏の変動解明 アジア・オセアニアから世界への発信

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平成17年度多目的観測サイト(別府・阿蘇)「沈み込み帯物質循環の過去と現在」

竹村恵二・山本順司・柴田知之・瀬戸口烈司・平島崇男・大倉敬宏・宇津木充

九州北中部を中心として実施された地質学鉱物学巡検に,平成18年3月17日〜19日にかけて,COE多目的観測サイトとして,「沈み込み帯物質循環の過去と現在」のテーマで昨年にひきつづき参加・協力した.
 参加者は,地球熱学研究施設(別府)から,教員3名(竹村恵二・山本順司・柴田知之),地球熱学研究施設火山研究センター(阿蘇)から教員2名(大倉敬宏・宇津木充),地質学鉱物学教室から教員2名(瀬戸口烈司・平島崇男)院生3名,学生2名であった.
 3月17日(金)は過去の変動帯の付加体堆積物を実感する目的で,大分県中南部の日豊海岸沿いを訪ねた.この日のタイトルは「九州東部のジュラ紀付加体と海成段丘」である.
 目的は,日本列島の骨格をなす付加体の岩石や構造を観察し,その形成過程を野外で討論することにあった.九州東部には複数に区分された付加体群が見られるが,そのうち秩父帯と三波川帯,その両者に分布が挟まれる大野川層群分布地を中心に巡検を行った.三波川帯は中央構造線の南側を関東山地から九州中部まで連なる低温高圧型の変成帯であり,構成岩石は砂岩,泥岩,チャート,石灰岩,蛇紋岩を主体とする.秩父帯は三波川帯の更に太平洋側に帯状に分布するが,年代も構成岩石も三波川帯とほとんど同じである.両者の違いは変成度にあり,秩父帯の方が低い変成度を示す.
 露頭では付加される際に発生したと考えられる堆積物の大規模崩壊や未固結変形など様々な現象が観察でき,時には海山の衝突に因ると思われる大規模な石灰岩体も見られた.今回は別府湾南岸に発達する海成堆積物と海成段丘は実施しなかった.
 下記地点の見学を企画した.時間の関係で,昨年見学した津久見石灰岩の鉱山の見学は残念ながら見送ったが,石灰岩と9万年前の阿蘇カルデラ噴出物である火砕流の不整合露頭を新たに発見するなど興味深い巡検となった. 
Stop 1. 秩父帯,尺間山層群(江ノ浦越北方海岸)&昼食
Stop 2. 秩父帯,津久見石灰岩露頭および阿蘇4火砕流との不整合
Stop 3. 秩父帯,津久見石灰岩遠景,Stop 4. 大野川層群(東九州造船所東方海岸)
Stop 5. 三波川帯,泥質片岩(室生東方海岸),Stop6. 三波川帯,蛇紋岩,結晶片岩(日鉱金属東方露頭)
3月18日(土)は現在の活発な活地球圏の実態を知るために,中部九州の活動的な火山・地熱地帯を見学した. この日の見学では別府市の湯煙と明礬温泉の湯の花を観察し地熱地帯への理解を深め、また八丁原地熱発電所を見学し自然現象の社会的利用とその技術の実例を学んだ。引き続き、地熱の源となる火山活動を知るため、阿蘇の火山群とそれを構成する溶岩及び火砕流堆積物、大規模火山活動によって生じたカルデラを遠望した。その後中央火口丘へ向かい,大倉・宇津木両氏の説明で,火口からエメラルドグリーンの湯だまりの観察や地殻変動や地震観測システムを見学できた.
翌3月19日(日)に熊本県西部にむけて,火山研究センターを出発した.

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写真1:尺間山層群(付加体,秩父帯)の露頭

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写真2:津久見石灰岩(左の白い部分)と阿蘇4火砕流(右の赤い部分;約9万年前)の接触部

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写真3:大野川層群の地層下面 (流れの方向を示す底痕が観察される)

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写真4:三波川帯の岩石(泥質片岩)

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写真5:クロボク中のアカホヤ火山灰 (約7,300年前の鹿児島南方,鬼界カルデラ噴火)

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写真6:鬼箕玄武岩(約1万年〜2万年前噴火)の露頭

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写真7:阿蘇中岳火口縁で活動状況等の説明を受ける(火山弾の側で)

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写真8:2006年3月18日の阿蘇中岳火口

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