京都大学21世紀COEプログラム 活地球圏の変動解明 アジア・オセアニアから世界への発信

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多目的観測サイト(別府)観測地球物理学演習

竹村恵二,大沢信二,堤浩之,柴田知之,川本竜彦,山本順司,芳川雅子

地球熱学研究施設(別府)にて,2006年7月30日から8月1日にかけて観測地球物理学演習を行った.10名の理学部学生を教員6名(竹村恵二,大沢信二,堤浩之,柴田知之,川本竜彦,山本順司)と技術職員1名(馬渡秀夫),教務補佐員1名(芳川雅子),研究員5名(杉本健,齋藤武士,西村光史,栗谷 豪,山田国見)で指導した.
 演習の内容は,初日の現地実習と2,3日目の室内実習に大別される.初日の現地実習は,別府を中心とした地域をバスで巡検し,別府ー島原地溝の活構造を様々な視点から眺め,その規模と発達機構を現地で議論することから始まった(写真1).付随して,活火山(鶴見岳)とその近辺に見られる様々な火成岩を観察し,その組織と鉱物組み合わせから火成活動の成因を現場で議論した.また,翌日以降に行う室内実験に用いる岩石試料を採取した.岩石採取に際し,ハンマーの使い方に戸惑う学生が多かったが,何度も採取する間に岩石の構造と割れ方の関係に気づく者や,風化の度合いを気にする者,地形と岩石種の関係を議論する者が現れ,現場に出向く意義を感じてもらえたようだった.次いで,別府が世界に誇る地熱温泉活動の特徴を議論するため,別府地獄地帯の“かまど地獄”で,温泉の温度や電気伝導度,pHを現場で測定した.また,翌日以降の室内実験で用いる温泉試料の採水を行った(写真2).
 7月31日ー8月1日は,採取した温泉・岩石試料の化学分析及び地形・地質解析を行った.学生10名に「水を読む,地形・地質を読む」及び「岩石を読む」の2グループに分かれてもらい,片方は7月31日に温泉試料の分析と地形・地質解析,8月1日に岩石分析を行った.もう片方のグループは反対の順で行った.岩石の化学分析では,分析の目的とその目的に応じた測定法の解説及び実習を行った(写真3).更に,地球を構成する様々な主要成分と測定結果を比較することにより中部九州の火成活動の物質源と生成機構を議論した.さらに,偏光顕微鏡を用いた実習や岩石と相転移の観察を行った(写真4).温泉試料の分析では,溶存しているシリカ濃度を様々な手法を駆使して測定し(写真5),既存のデータと比較することによって温泉の起源を議論した.地形・地質解析では,空中写真の立体視や断面図を描くことによって,火山地形や活断層を解析する手法の実習を行った.
 このように中部九州の大規模地溝帯で巻き起こる様々な地球科学的現象を,現地観察と室内実習及び化学分析等多方面から概観することにより,地球科学的モデルの巨大なスケールと,それに至る緻密な研究過程を十分に感じてもらえたのではなかろうか.参加者全員から寄せられたレポートと感想から,そのようなことを垣間見た気がした.

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写真1

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写真2

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写真3

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写真4

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写真5

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