京都大学21世紀COEプログラム 活地球圏の変動解明 アジア・オセアニアから世界への発信

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多目的観測サイトの活動(別府):地溝帯における活構造 報告

竹村恵二・堤 浩之

8月1日から3日まで,課題演習D3と関連した実習が多目的観測サイトの活動として実施された.京都からは堤 浩之ほか学生3名,別府では竹村が参加した.この実習は,活動的な火山・地熱地帯である別府地溝地域に展開する活構造の実態を,現地で観察・記載・考察するプログラムとして実施された.昨年から開始され,野外での実習を重視するプログラムで構成されている.1日は朝9時からオリエンテーションを行い,別府の地球科学概要(火山・地熱・活構造等)を紹介した後,資料(配布済みのスケッチブック,地形図,地質図,空中写真)と観測器具(クリノメーター,ハンマー,ルーペ,ハンドレベル,スタッフ)を準備した.その後,現地実習を行う地域の空中写真判読を実施し,概略の断層位置等を地形図に記入した.午後は,別府扇状地と南方山地を限る朝見川断層を見学し,空中写真で記載した情報と現地での情報を比較検討した.また,断層崖の比高を2人1組で簡易測量した.
2日は,別府湾北岸地域に広がる平坦な地形面は主に火砕流から構成される地形面に見られる活断層地形を対象とした.空中写真で確認した活断層分布地点で,断層崖の比高を2人一組の簡易測量で測量した.平坦な地形面上での炎天下の作業は,照り返しの影響もありかなりハードな実習となった.その後,別府湾北岸の切り立った崖の断面観察に向かった.海岸の崖は,多彩な種類の岩石や堆積物(火砕流,海の堆積物,軽石層など)で構成され,学生達は測量した活断層の断面をこの崖の中で探す作業等に没頭した(写真1&2).この日は晴天で直射日光を受けての過酷な作業となった.午後は,別府地溝の北部に分布する,火山活動と関連した小規模の正断層の観察およびスケッチが実施された.伽藍岳にみられる別府地熱地域の噴気地帯を遠めに観察した後,断層運動がいつ起こったかという重要な時刻を定義できる大規模噴火の火山灰の観察を実施した.この崖には,阿蘇カルデラができたときの大爆発時(約9万年前)の火砕流から,九重火山の爆発時の火山灰,鹿児島の姶良カルデラからの火山灰,さらに鹿児島南方海上の鬼界カルデラからの火山灰(7,300年前)が含まれており,約10万年前から現在までの時刻を刻む古文書を感じさせる場所であった.
 学生達とともに, 2日間の疲れを温泉でいやして,2日目が終了した.3日目は,午前中をとおして2日間に観察・記載した多くの自分で獲得した情報をレポートにまとめる作業が実施された.この作業により,取得したデータの整理方法の基礎的な演習ができた.
 炎天下での演習もあり,まだ初歩段階でもあり,困難な点や理解できにくい面もあったと思われるが,学生にとって,貴重な体験を得ることのできた演習であったことを期待している.

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写真1 別府湾北岸での実習

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写真2 断層露頭の観察

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