京都大学21世紀COEプログラム 活地球圏の変動解明 アジア・オセアニアから世界への発信

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“KAGI21 International Workshop on Regional Models for the Prediction of Tropical Weather and Climate” の報告

余田 成男・堀之内 武

 2006年3月1日から3日までインドネシア・バンドンにおいて, KAGI21の主催により「熱帯気象・気候予測のための領域モデルに関する国際ワークショップ」を開催した. インド, インドネシア, シンガポール, タイ, フィリピン, ベトナム, マレーシア, ラオス, および日本の9カ国から14名の講演者(写真1)を招き, 地元インドネシアからのポスター発表者, オブザーバーを加えて, 約30名規模のワークショップを開いた(バングラディシュからも参加予定者があったが, ビザの問題で直前にキャンセルとなった).
 「メソモデルによる領域天気予報」「領域気候モデルによる長期予測」「メソモデルによる数値実験」の3つのセッションに分け, 講演と質疑応答の時間を十分にとって, 2日半のプログラムとした(添付のファイル). 2日目午後にはバンドン工大の地球物理学・気象学教室に場所を移し, PCクラスターの紹介(写真2)やメソモデルおよび解析ツールのデモンストレーションを行った.
 以下は, KAGI21からの参加者のひとりである堀之内氏(生存圏研究所)の報告である. (余田 成男)

本研究会は日本および東南アジア諸国の招待講演者の発表により構成された. オープニングでは余田氏が数値予報の歴史を紐解いた上で, パソコンの発展のおかげで数値予報や気候予測計算が予算が潤沢な先進国だけのものでなくなりつつある現状について説き, 今後のアジアにおける協力の重要性と可能性を示した. 続いて, 現業非静力モデル(NHM)の開発を主導した斉藤氏をはじめとする様々な発表が行われた. 斉藤氏は, 参加者の住むアジア域で数値予報を行いながらパラメタリゼーション等を改良してきた経緯にも触れ, 多くの参加者から気象庁NHMやその一部の利用に関し興味や質問が寄せられた. 東南アジアの参加者からは, 様々な領域気象計算や数値予報に関する発表が行われた. 現業で数値予報を行っている国は少ないが, 多くの国で試験的な研究が行われていることが印象的であった. 用いられたモデルは, ほとんどがMM5かWRFである. 現業で数値予報しているタイでも, サポートに費用がかかるなどの問題から, かつて移植を受けたUKMOモデルからMM5への乗換えを検討しているとのことであった.
 アジア内での協力の強化をテーマとした会ではあったが, 影の主役は米国になりつつあるような印象を受けた. ただし, かつてドイツなどで学んだハノイ大のXin氏のグループは, ドイツから移植された数値予報システムを用いてデータ同化などの試みを精力的に行っており, 内容も印象的であったが, 人のつながりの重要性の示す好例であるようにも思えた. 今後, 日本の気象研究コミュニティーを巻き込みながら, 気象庁のモデルがアジアの国々で使われるようになれば, 大きな国際貢献となるだけでなく, 特に熱帯において良いフィードバックのかかる関係が築けるのではないかと思わせられる会であった. (堀之内 武)

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ワークショップ招待講演者を中心に会場ホテルの玄関で記念撮影

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Tri Wahyu HADI氏がITBのPCクラスターを説明しているところ

ワークショップのプログラム WORD [51kB]

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