京都大学21世紀COEプログラム 活地球圏の変動解明 アジア・オセアニアから世界への発信

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ワークショップ「インドネシアにおける古気候変動」の報告

渡邊裕美子(COE研究員)

1. はじめに
KAGI21-COEプログラムにおけるインドネシア鍾乳石プロジェクトの一環として、2006年6月5日に、バンドン工科大学(ITB)で、“インドネシアにおける古気候変動”に関するワークショップが開かれた。ワークショップはITBが事務局を努め、日本・インドネシア両国合わせて、40名を越える参加者があった。ワークショップへの日本側からの参加者は、竹村恵二氏(京大)、田上高広氏(京大)、大沢信二氏(京大)、松岡廣繁氏(京大)、渡邊裕美子(京大)、北岡豪一氏(岡山理大)、山田誠氏(岡山理大)、小野達志氏(岡山理大)、二宮渉氏(岡山理大)の9名であった。
従来から、個々の研究者間ではインドネシア鍾乳石プロジェクトに関する意見交換がなされていたが、今回はインドネシア鍾乳石プロジェクトの概要をインドネシアの研究者へ広く説明し、多分野間の研究者の人的交流と意見交換をすることを目的に、ワークショップが開催された。以下に、ワークショップの概要を報告する。

2. ワークショップの概要
セミナーの前半では、KAGI21-COEプログラムにおけるインドネシア鍾乳石プロジェクトの概要が日本側から紹介された。最初に、田上高広氏から、インドネシア鍾乳石プロジェクトの展望と2006年3月に行われたジャワ島西部・スカブミ地域の鍾乳洞調査の様子が説明された。次に、竹村恵二氏は、古気候の記録媒体として縞々を持つ堆積物・アイスコア・木材・珊瑚・鍾乳石の研究について比較しながら、鍾乳石研究の意義を明確に説明された。続いて、Budi Brahmantyo氏 (ITB)から、インドネシアの石灰岩地域の分布やその地質について紹介された。これは、インドネシア鍾乳石プロジェクトの今後の研究対象地域を考慮する上で有用な情報であった。大沢信二氏から、鍾乳洞内のDrip Waterの研究、特に3H-3He法を利用したTraveling Time(地表から洞天井までの通過時間)の求め方や試料採取法についての説明がなされた。渡邊裕美子から、ウラン放射非平衡年代の原理や鍾乳石への研究例が紹介された。松岡廣繁氏は、手取層群と太陽の黒点活動についての研究を解説した。
セミナー後半では、インドネシアにおける古気候研究についての情報がインドネシア側から提供された。Satria Bijaksana氏 (ITB)から、インドネシアの年輪年代学についての情報が提供された。熱帯域では明確な年輪を持たない木材が多いと言う問題点があったが、近年では炭素・酸素同位体を利用して年輪を見極めに成功するなどの進展が報告されていた。Wahyoe S. Hantoro氏 (LIPI, Bandung)は、インドネシアの珊瑚を用いた古気候変動解析についての研究を報告した。Khoiril A. Maryunani氏 (ITB)は、海底堆積物コアを利用した海水温変遷についての研究を報告した。以上の三氏の発表から、インドネシアにおける木材・珊瑚・海底堆積物コアを用いた古気候解析の進展状況を把握することができた。

3. おわりに
  今回のワークショップは、インドネシアにおける古気候研究について情報交換することができ、さらにインドネシアの研究者との交流を深められた点で大変意義深かった。インドネシア側の参加者も友好的に接してくれ、終始和やかな雰囲気の下で議論がなされた。最後に、ワークショップを円滑・快適に進めることができたのも、会場の準備や広報をして頂いたITB事務局の協力の御蔭である。記して、感謝する。

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図1:ワークショップのポスター

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図2:ワークショップのプログラム

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写真1:ワークショップの開催風景(バンドン工科大学にて)

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写真2:講演する田上高広氏

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写真3:ワークショップ後の集合写真

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