◆「磁気嵐と磁気圏プラズマのイオン組成」
能勢 正仁(地磁気世界資料解析センター)
地球はそれ自身が大きな磁石になっており、その周りには磁場が生じています。これを 地磁気と呼びます。日本付近で地磁気の大きさを測ると45000nTから50000nTくらい であることが分かります。地磁気は常に変動しており、日本付近でも時には500nT以上も 減少することがあります。このような非常に激しい地磁気の擾乱は磁気嵐と呼ばれています。 磁気嵐時に地磁気が減少する原因は、地球周辺の宇宙空間(磁気圏)に西向きの強い電流が 流れるためであることが分かっています。従来、この電流はプロトンによって担われてい ると考えられてきましたが、酸素イオンの寄与も重要であることが明らかになってきました。 セミナーではどれくらい酸素イオンが重要な働きをするのか、またどこから酸素イオンが やってきたのか、などについて解説します。
[セミナー風景]
◆「造岩鉱物の分子動力学シミュレーション」
三宅 亮(理学研究科地球惑星科学専攻)
地球やその他の惑星を形成している物質を研究する方法のひとつとして、
物質の構成のなるべく基本的な単位を、基本的な法則を用いて調べるとい
うアプローチが考えられる。分子動力学(Molecular Dynamics, MD)シミ
ュレーションは、原子、イオン、あるいは分子を最小単位とし、その振る
舞いを運動方程式を解いて計算することで、岩石や鉱物のマクロな物性を
導き出す手法である。この手法を用いれば、地下深部のような実験困難な
条件下での岩石鉱物の物性の予測が可能となるだけでなく、分子レベルで
の現象がマクロな物性にどのような影響をおよぼすのかを知ることができ
るという利点がある。
今回のセミナーでは、まずはじめにMDシミュレーションを用いた造岩鉱
物の弾性定数およびその弾性波速度の導出方法について述べる.続いてそ
の適用例として,上部マントルの主要な鉱物の一つであるエンスタタイト
(Mg-輝石)の弾性波速度と〜410kmより浅い上部マントルでの地震波不連
続面との関係について述べる。
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