京都大学 大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻、理学部 地球惑星科学系

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五島仁志さん(富山県砺波土木センター)

地球惑星科学専攻の卒業生である五島仁志さん(2014年度修士課程修了)は、学部・大学院時代には測地学の研究に携わり、現在は富山県の砺波土木センターで勤務されています。今回は五島さんにお時間を頂き、学生時代の研究や現在の仕事について伺いました。


写真:砺波土木センター勤務中の五島さん

――まず、京都大学を志望したきっかけは何ですか?
私のいた高校は富山県立高岡高等学校というところで、京大には毎年10人近くが入学します。私も高校2年生の頃から京大を目指していたと記憶しています。

――京都大学の3年生時に、系登録で地球惑星科学系を選んだきっかけは何ですか?
高校の授業では化学が面白くて、入学した時には漠然と化学系に進みたいと思っていましたが、1回目の系登録では成績等の観点から化学系での登録ができませんでした。その後、地球惑星科学の入門的な講義を全学共通科目で受けていたのを思い出し、2回目の募集で地球惑星科学系に登録しました。地球惑星科学系への登録は、最初はあまり積極的な理由ではありませんでしたが、研究室に入ってみると地球惑星科学がとても面白い学問なのだと感じました。

――学部時代にはどのような勉強・生活をされていましたか?
私は部活(水泳部)を引退時まで続けていて、全国の国公立大学の大会に出たりしていました。部活をしている時は授業に出ても居眠りをしてしまうこともありましたが、部活を引退してからは本格的に地球惑星科学系の講義を受けるようになりました。


写真:水泳部時代の五島さん

――学部4年生の時に地球物理学教室の測地学研究室に所属されていますが、そもそも測地学研究室を選んだきっかけは何だったのですか?
東日本大震災が発生したのが学部2年生の3月で、それ以降地震の研究をしたいと思っていました。その後、3年生時のガイア祭や測地学の講義で、宮崎真一准教授が東北地震時のGPS地殻変動の話をされていて、GPSでそんなことが分かるんだと感心しました。これらのことがきっかけで、3年生の終わりに測地学研究室で研究することに決めました。

――学部卒業後には大学院に進学されましたが、大学院で地球惑星科学専攻に進んだ理由は何ですか?
学部4年生でやっていた研究を1年で終えるのは早すぎるな、と感じていました。自分の研究をさらに進展させたいと思い、大学院に進学して学部4年時の研究を続けることにしました。

――学部4年生~大学院時にはどのような研究をされていたのですか?
大地震の時には断層のずれに伴って地殻が大きく変動しますが、その断層ずれから地殻変動量をより正確に求める手法を開発しました。というのも、これまでは海底地形や地表地形を無視して地殻変動の計算がされてきましたが、この手法では地形の凹凸を考慮してより現実的な地殻変動を再現できるようになったのです。今後はこの手法の中で地下構造の寄与をさらに考慮することで、地震が終わった後の長い時間スケールの地殻変動(余効変動)およびそのメカニズムをより忠実に再現できると期待されています。


図:五島さんの手法によって得られた、東北地震時の地殻変動(赤矢印・青矢印)。GPSで観測された実際の地殻変動量(黒矢印)と良く一致している。

――研究を進める中で嬉しかったことや、苦労したことはありますか?
私は自分の研究に関連するソフトウェアのコードを1から書いていたので、コードの正解が分からない、答え合わせができないことには悩みました。また、1日で終わるだろうと思っていた内容が1週間も掛かってしまうなど、研究ではうまくいかないことも多かったと記憶しています。でも、自分が期待した結果が出たり、綺麗な図が描けたりすると達成感がありました。気長に研究を続けてきて良かったな、と思いました。

――現在はどのようなお仕事をされているのですか?
富山県の職員として、現在は砺波土木センターというところに勤務しています。富山県は昔から水害が発生しやすい場所で、その関連の公共事業が盛んに行われています。私もそのような公共事業に関わっていて、今は砂防関連の工事の監督などを行っています。自分がこの仕事に携わることで、少しでも災害が減ってくれればいいなと思います。


写真:河川工事の監督の様子

――現在の仕事の中で、学部・大学院時代の経験はどのように生かされていますか?
学生時代は1つのテーマを気長にじっくりやるという感じでしたが、今は数ヶ月くらいに業務内容が変わるというイメージです。業務のスパンが短くて大変ですが、大学院時代にじっくり考える癖が付いたおかげで、1つ1つの仕事を丁寧にこなせていると思います。
また、大学院時代に研究室の留学生と接したことはとても貴重な経験でした。最近は英語を使う機会はありませんが、「今の文章を英語で話したらどういう風になるかな」と考えることがたまにあります。今後仕事で英語を使う可能性もあるので、この経験が生きるはずだと思っています。

――最後に、後輩や進学希望の学生たちに伝えたいことはありますか?
最先端の内容をじっくり研究することはとても貴重な機会です。研究が進展せずに悩むこともあるかもしれませんが、その時の自分にできることを少しずつでも進めていくと、その先が見えてくることがきっとあると思います。
また、先ほども述べた通り、私自身はもともと地球惑星科学を志していたわけではありませんが、講義やウェゲナー祭で聞いた話を元に地球科学に興味を持ちました。意外な場所で面白いことに出会い、小さなきっかけでのめり込んでいくことがあるのだな、と実感しています。

――五島さん、今日はどうもありがとうございました!

(インタビュー日:2015年9月29日/文責:風間卓仁)

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