京都大学 大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻、理学部 地球惑星科学系

MENUMENU

一田昌宏さん(豊橋市自然史博物館)

地球惑星科学専攻での研究を通して

豊橋市自然史博物館 一田昌宏
(2012年度地球惑星科学専攻博士課程修了)

写真:国際学会参加後のヨーロッパ紡錘虫採集旅行の様子

化石の中毒性
小学校時代に家族旅行で訪れた山口県秋吉台で,父親の一言で拾った紡錘虫入りの石灰岩から始まり,それ以後ずっと小さな化石,特に紡錘虫類に興味をもっていました.高校卒業まで京都府向日市ですごしましたが,小学校高学年に『京都の地学図鑑』という本を手に入れ,高校まで京都盆地周辺の鉱物や化石を自転車で取りに行って楽しんでいました.大学進学では,小さいころから身近だった京都大学も考えましたが,紡錘虫の研究ができる東京学芸大学に進学し,卒業研究では京都西山に分布するジュラ紀付加体中の石灰岩より産出する紡錘虫類の再検討を行いました.もともと紡錘虫類の化石が好きな私にとっては,やみつきになる最高に楽しい時間でした.2005年度末に卒業論文を提出し,翌年度は恥ずかしながら留年生として残りの単位を取得する傍ら,ひたすら関東周辺の紡錘虫類の薄片を作る日々を過ごしていました.その中で,実は分類や生層序しか研究が進んでいない紡錘虫類の古生態に興味を持ち始めました.

地球惑星科学専攻修士課程への進学
紡錘虫類の古生態への興味を学部の指導教官であった猪郷久治先生に相談したところ,フィールドの近さや研究の多様性,そして図書室の充実などの点から京都大学大学院地球惑星科学専攻の地質学鉱物学教室への進学を勧められました.2006年2月に京都大学総合博物館で開催された古生物学会例会にて当時総合博物館教授であった大野照文先生(現三重県立博物館長)に紹介していただき,大野先生の第一声に驚きつつも地球惑星科学専攻地質学鉱物学教室の研究の多様性に惹かれ受験を決意しました.ちなみに大野先生の第一声は,『わしは,指導は一切でけへんけど,それでええなら来ぃ』です.子どものころから持っていた京大のイメージそのままでした.実際指導教官となった大野先生からは,内外の研究者を紹介していただいたり,研究について議論していただいたりと丁寧な指導を受けました.第一声の内容とは全く整合性がとれていませんが,それも京大らしいと思います.


写真:2007年北海道巡検の様子

地質学鉱物学教室の多様性
2006年4月,京都大学大学院地球惑星科学専攻地質学鉱物学教室に入学し,生物圏史講座に所属しました.驚いたのは学部の指導教官の先生が仰っていた研究の多様性の高さと先輩の多さでした.堆積や古脊椎動物,テクトニクス,タフォノミーなど様々な分野の授業やセミナー,巡検など,これまで教科書でしか学べなかったことが実体験として学べることに興奮していた気がします.特に,多くの巡検に参加して得た経験や知識は,今でも大きな財産となっています(化石も沢山ゲットしました...).この実体験を通した経験が,修士論文や博士論文に大きくプラスの影響を与えたことは言うまでもありません. また,この経験は現在所属している博物館においても大きくプラスに作用しています.就職して最初にかかわった大きな仕事は,常設展示室である新生代展示室の大改装でした.『そもそも古生代の微化石を得意とする私が,新生代の大型化石が主に展示される展示室の改装業務ができるのか?』と不安でしたが,地質学鉱物学教室での経験の助けもあり,納得のいく仕事となりました.

最後に
修士課程以後,地質学鉱物学教室で得た知識や経験は,卒業後の様々な機会,場面で私を助けてくれていますが,その知識や経験の根底にあるのはこの教室の多様な研究と先生方や先輩,後輩との露頭の前など場所を問わない議論等であったと言えます.未来の後輩の方々にも,この教室での楽しく,刺激的で,濃密な時間を過ごしていただきたいと思います. この文章を書くにあたり,上で紹介した『京都の地学図鑑』を久しぶりに手に取ってみました.執筆者の一人が私を修士課程に受け入れ,指導してくださった大野先生であり,非常に驚きました.2006年以後,地球惑星科学専攻地質学鉱物学教室から大きな影響を受けましたが,実は1993年から影響を受けていたようです.

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