京都大学 大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻、理学部 地球惑星科学系

MENUMENU

岩出 昌さん(慶應義塾普通部)

地球惑星科学専攻での研究を通して

慶應義塾普通部 岩出 昌
(2011年度地球惑星科学専攻修士課程修了)

大学入学以前
私が幼少のころは所謂恐竜ブームの只中で、私自身も近所だった国立科学博物館へ通ったり、家のとなりの駐車場の石ころに化石を探したりと、古生物に対して強い関心を持っていました。しかし、時がたち成長するにつれてこうした記憶は薄れ、中学高校の時には、どちらかというと化石ではなく生身の生物の発生や進化へと興味が移っていました。京都大学理学部の受験を決めたのも、生物系の研究をしてみたいと思ったからでした。

学部時代の生活・系登録
1浪の末、理学部に無事合格したものの、1、2回生の時には、軽音楽部でのバンド三昧の日々を送りました。恥ずかしながら学業面ではかなり出遅れてしまい、希望通りに系登録を済ませられるかどうかも危ぶまれるような状態でした。そこで、当初志望していた生物系だけでなく、地球惑星科学系の説明会にも行ってみようと思い立ったことが大きな転機でした。地球惑星科学系の説明会で、特に古生物分野の話を聞いているうちに、幼少のころの化石への興味が徐々に甦ってきました。かなり迷いましたが、何か今までと違うことをやってみようと思い、地球惑星科学系の地質学鉱物学教室へ進むことを決めました。


写真:Sphenoceramus naumanniの化石産状。スケールバーは1 cm。

写真:北海道羽幌地域での調査の様子。泥岩中からアンモナイトが産出。

地鉱教室での研究
いざ地鉱教室に入ってみると、地質調査の手法を学んだり、地層や岩石、地質構造を、実際に野外で観察する巡検に行ったりと、様々な新しい体験ができました。
卒業論文、修士論文では、前田晴良先生(現九州大学総合研究博物館教授)に指導していただき、白亜紀後期を代表する絶滅二枚貝であるイノセラムスの古生態について研究しました。示準化石としてよく知られているイノセラムスですが、その生態については不明な点が多々あります。そこで、生息場などの生態に関する情報を引き出すために、北海道羽幌地域の白亜系におけるフィールド調査を行い、イノセラムスの一種であるSphenoceramus naumanniの化石産状と化石を含む地層の堆積構造を詳細に観察しました。
調査は、毎年夏の2~3か月間北海道の山奥で行い、現地では50 ccのスーパーカブで林道をひたすら走りヒグマにおびえつつ毎日露頭に通いました。また、調査中滞在した宿では、宿泊費を安くしてもらうために、簡単な手伝いをしながら物置に寝泊まりしました。お世話になっているお礼に宿のテーマソングを作詞作曲し、1、2回生のときのバンド活動も思わぬところで役に立ちました。
調査から戻ると、持ち帰った化石やデータをまとめ、ゼミ発表を行います。フィールド調査の現場で自分の目で見てきた内容は、所属していた「アンモゼミ」や地鉱教室の院生部屋での議論を通して、さらに深められていくのを感じました。


写真:北海道羽幌地域での地質調査の様子。露頭を目指して移動中

現在の仕事
修士課程を修了した後、博士過程に進みましたが、途中で縁あって採用が決まったため、現在では慶應義塾普通部という中学校で地学を中心に理科を教えています。私自身がフィールド調査を通して学んだ、教室の外に出て自分の目で実物を見ることの大切さを伝えたいと思い日々授業を行っています。また、学校の宿泊行事や課外活動では、地層、化石、岩石、地形について野外で実物を前にして話をする機会をできるだけとるようにしています。このように、大学院での研究の中で経験したこと、得たことを、少しでも多くの中学生に知ってもらうことが自分を育ててくれた学問へ間接的に貢献することになると思っています。


写真:中学校の野外活動の様子。級化構造や断層についての解説。

最後に
地球惑星科学専攻、とりわけ地質学鉱物学教室には、様々なバックグラウンドを持った学生が集まっています。中には私のように紆余曲折があって最終的に地鉱教室を選ぶ学生もいるかもしれません。しかし、私はフィールド調査というそれまで全く未知だった世界に足を踏み入れることで、本当に多くのことを学んだと思います。文字通り世界(地球)の見え方が変わったといっても過言ではありません。系登録で悩んでいる人、卒論、修論でやりたい研究がまだぼんやりとしている人にこそ、今まであまり縁のなかった世界に思い切って一歩踏み出してみて欲しいと思います。

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