京都大学 大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻、理学部 地球惑星科学系

MENUMENU

佐藤永太郎さん(JX金属株式会社)

地球惑星科学専攻での研究を通して

JX金属株式会社 佐藤永太郎
(2015年度地球惑星科学専攻修士課程修了)


写真:国際エクロジャイト会議後、ドミニカ共和国のビーチにて

信州大学での卒業研究と京都大学大学院への進学
信州大学在籍時、巡検で三波川変成岩類や領家変成岩類に触れて、岩石一つから読み取れる情報の多さと、薄片の美しさから変成岩に興味を持つようになりました。そのため、卒業研究は美濃帯の中古生層と花崗岩との境界付近の地質構造や接触変成作用について研究をすることにしました。具体的には10km四方の山岳地帯を歩き回り、地質図の作製や変成分帯を行い調査地域の構造履歴、熱履歴の解明を目的に研究を行いました。卒業研究を進めるうちに、大学院では変成岩を専門に研究したいと思うようになりましたが、信州大学には変成岩を専門に扱っている研究室がありませんでした。指導教官に相談したところ、京都大学の岩石学講座を薦められ、研究室訪問したところ、研究室の活気や、京都大学特有ののびのびとした気風、また設備が充実しており、研究環境が充実していたことから京都大学へ進学することに決めました。

京都大学大学院 地球惑星科学専攻での研究生活
修士論文は熊本県八代市のローソン石青色片岩の岩石学について研究を行いました。ローソン石という鉱物はなんと自身の質量の約13%が水でできており、ローソン石青色片岩は沈み込み帯を通して地球内部に水を運ぶ重要なキャリアーと考えられています。研究はフィールド調査や薄片観察、EPMA分析が中心でした。フィールドでは20kgのサンプルを担いで1000段の階段を上ったり、ダニにかまれたり、またゼミで倒れたりと苦労することが多くありましたが、指導教官や研究室メンバーの方々に助けられ、在学中と卒業後に1本ずつ研究成果を論文として発表できたときは大きな達成感を感じました。 また、岩石学教室は国際学会にも積極的に参加しており、私もドミニカ共和国で行われた国際エイクロジャイト会議に参加しました。自分の研究成果を論文でよく目にする海外の研究者に聴いてもらい議論できたこと、海外の学生と交流できたことは大変刺激的で楽しい思い出になりました。


写真:国際エクロジャイト会議での様子

現在の仕事と職場で生きる院生時代の経験
大学院を卒業後、JX金属株式会社に入社しました。弊社は主に銅鉱山の開発や金属製錬、産業用の銅製品の開発・販売、環境リサイクル事業などを行っています。その中で、私は鉱山開発や鉱床探査の仕事に携わる業務を行っています。現在日本には開発できるような鉱床がほぼなく、チリやペルー、オーストラリアなどの海外のフィールドで鉱床探査を行っています。仕事は主にルートマップの作製や薄片観察、XRD分析などで、学生時代の経験が直接活かされています。また、大学院生時代に教えてもらった石の見方や地質の考え方が今の仕事をする上での基礎となっており、今になって思えば、辛いときもありましたが、京都大学大学院に進学してよかったと強く実感しています。


写真:チリでの調査の様子

最後に
私が所属していた岩石学講座では、フィールドで岩石をよく観察し、しっかりとものを見るという考えが根底にありました。私の好きな映画「インディー・ジョーンズ」の1シーンで、ジョーンズ博士が「よい考古学者になるには図書館からでることだ」というセリフがあります。地質の分野ではもちろん文献調査は重要ですが、それ以上にフィールドに出かけて、実際に物を見て得られる事実やインスピレーションも大切です。この考え方は社会人になっても、いろいろなところで生きてきています。是非学生時代に外に出て、いろいろなものを見て、考える習慣をつけていただければと思います。


写真:チリでの調査の様子(標高が高いため夏でも雪が残る)

(執筆日:2018年1月7日)

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