京都大学 大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻、理学部 地球惑星科学系

MENUMENU

中西邦仁さん(学校法人白頭学院建国中学校・高等学校 教職員)

地球惑星科学専攻での研究を通して

学校法人白頭学院建国中学校・高等学校 中西邦仁 教職員
(2015年度地球惑星科学専攻博士課程修了)


地球惑星科学に興味を持った理由
高緯度に見られるオーロラという現象を写真や映像などを通して、その美しさに見とれていました。しかし、それは他の風景も同様なことであり、特別にそれだけに関心があるわけではありませんでした。
しかし、学部生でたまたま地球惑星科学の授業を受け、それまで学んだ物理の知識を用いて、オーロラの仕組みについて説明できることを知りました。まず、とてもシンプルな自然の法則がオーロラという壮大な現象を説明することができるほど自然の法則が一貫していることに再認識しました。そして、何よりもその自然の法則という「メガネ」をかけて再びオーロラの映像を見ると、目に見えない太陽の爆発や地磁気というシールドをはじめ太陽系すべてをくるめたダイナミックな現象となり、まったく違うように見えました。こうして、地球惑星の現象を自然の法則を用いて説明するという世界に興味を持ちました。

大学・大学院での学生生活
大学に入ってから何を求めればいいか非常に悩みました。最低限の単位取得のために勉強はしたが、それ以上のことは求めませんでした。一方、何よりも新しい世界観を知ろうと刺激を求め、多くの外国人と交流を深め、意見交換したり、一緒に旅行したりすることに時間を費やしました。
しかし、それぞれの国や文化の歴史について話をして、科学にたいしても歴史という視点から見るようになりました。それからは、科学の歴史の本をひたすら読んで、その時代ではどんな課題がありどのようにしてその課題を乗り越えてきたのか、という科学の発展に関心を持つようになりました。すると、力学・電磁気学・流体力学、統計力学、量子力学がひとつの歴史的発展として捉えることができ、自分自身もそれらを身につけてさらなる科学的な難題に対して研究していきたいと思い始めました。
それからは、朝から晩まで必死に勉強しました。基本は自主ゼミを通して互いに教えあって理解を深めていきました。


写真:アルザス・ストラスプール(フランス)にて

大学院での研究生活
研究では、多くの壁が立ちはだかりました。まずはプログラミングです。パソコンを用いた作業が本当に苦手で、長い間苦しめられました。また、実験や観測についても不器用で、すぐに道具の原理を理解することができませんでした。そして、何よりも自分じしんが見ている現象が何かまったくわからなかったことが一番辛く、はじめの一年以上はこれにもがき苦しみました。
研究内容は、最新の低軌道衛星によって観測された地磁気に上乗せされている軌道に沿った短い周期の磁場変動を、過去の衛星観測によって発見されたのと同様に確認し、そのメカニズムについて考察することです。その磁場変動が私の目から見ても単なる変動としか見えず、何度これを見ても、発生のメカニズムについてどうやって考察すればいいか分かりませんでした。
しかし、いろいろな先行研究を調べ、多くの論文を読んで、同じような壁にぶつかった過去の科学者たちがどのようにして乗り越えていったか、という先人の知恵を蓄えると、いろいろと挑戦する意欲が湧いてきました。
そして、何よりも担当教員がいつもそばにいて支えてくれたり、研究室の仲間が互いの研究にたいして意見交流をするなどしたりして、常に後押ししてくれる方々がいたため、最先端の科学的な課題という大きな壁にたいして挑戦することができたと思っています。
研究室では、日ごろから研究だけでなく様々なテーマについて意見を交わしたり、ときには旅行したりして、コミュニケーションがとれていることは、最終的には何よりも研究という非常に難しい取り組みを支えてくれると思います。


写真:博士号取得の記念に、研究室の仲間と撮影

現在の職務
私はいま中学校・高校で理科を教えています。最先端の科学を切り開くには荷が重いのもありました。一方、それまで築き上げられた科学をしっかり社会に還元して人々に共有しなければならないという責任感が強くなりました。特に、東日本大震災以降その思いが強くなり、子供に教えることが好きであったこともあって中高等学校の教員になろうと考えました。博士課程になってから教員免許を取得し、学位取得後、教員になりました。


写真:科学の発展の流れを伝えながら

地球惑星科学専攻で現在生かされていること
生かされていることはたくさんありますが、二つ述べたいと思います。
はじめに、科学的な事実が自分のなかでどのように定着するか、よくわかったことです。まずは疑問を持ち、次に今までの知識を用いていろいろと悩みながらも思考し、そして、それを明らかにするために実験や観察などの工夫を行う。この流れがあって、自分自身が納得してその科学的な認識を受け入れられると考えています。これは私のような研究者だけではなく、子供たちにとっても同じだと思っています。そのため、授業ではこの流れで進行しています。特に、歴史的な課題と生徒達の課題を照らし合わせると、面白いことに一致しています。そのため、授業ではガリレオの慣性の法則やニュートンの運動方程式と万有引力という科学的な発展をそのまま教えることができ、とても面白く、生徒達がそれらの事実を理解したときの喜んだ顔は忘れられません。
つぎに、こうした科学的な事実は受け入れがたいし理解することが難しく、わたしの担当教員はよく「研究はひとりではできないよ。」と述べて、互いに支え合うことを促してくれ、研究そのものがとても楽しくなりました。子供たちに互いに教えあい支え合うという姿勢を大事にさせ、授業ではそうした時間をもっとも大事にしています。
子供達には日ごろから、研究者みたいに疑問を持ち解決していきたいという姿勢を保ってほしいと接しています。目の前が小さいが有望な研究者でいっぱいな感じがして、とてもおもしろいです。いずれかは、地球惑星科学の研究をふくめ社会の課題にたいして、その姿勢を大事にして活躍できる日を心より待ち望んでいます。

(執筆日:2018年7月8日)

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