京都大学 大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻、理学部 地球惑星科学系

MENUMENU

市村美沙さん(国土交通省 国土地理院)

地球惑星科学専攻での研究を通して

国土交通省 国土地理院 市村美沙
(2016年度地球惑星科学専攻修士課程修了)

地球物理を選んだきっかけ
もともと宇宙や地学に興味があり、様々な分野を幅広く学べる京大の理学部を受験しました。合格発表の翌日に発生した東日本大震災をきっかけに、地球の現象について勉強したいと思い、入学後から地球科学をメインに学ぶようになりました。学部2回生の系登録では地震や気象といった研究対象の幅広さに魅力を感じて、地球物理を選択しました。

研究室の選択
私は4回生で地球熱学の研究室に進みましたが、火山に興味を持ったのは、2回生の時の「観測地球物理学演習」で阿蘇山に行った時です。初めて見る火山のエネルギーに感動し、火山の下は一体どうなっているのだろうと疑問を持ちました。

配属後の研究
研究室に入ってからは阿蘇山の火山性微動についての研究を行っていました。阿蘇山では噴火前に微動振幅が大きくなるという現象が知られています。そのメカニズムを解き明かすため、微動の震源とその時間変化を調べました。微動は通常の地震と異なり地震波の到来時刻を読み取ることが難しいため、観測点どうしの振幅比を用いて震源推定をしました。その結果、微動を発生させる火道の分布や微動振幅が増大する過程を明らかにすることができました。

研究をする中で面白かったこと
4回生の1月ごろに最初の震源推定結果が出たのですが、微動の震源がきれいに火口直下に推定されていて感動しました。まだ誰も知らないことを自分の手ではじめて明らかにできたことが楽しかったです。また、在学中には、指導教員の先生にはもちろん、研究室内外の方々にもたくさんサポートしていただきました。学会発表では、様々な分野の先生から意見を貰えたり、他の大学ではどんな研究をしているかを知れたりして、いい刺激になりました。研究を通して、知識や経験だけでなく、人とのつながりも得られたことも印象深かったです。


写真1:学会のポスター発表

写真2:修士2年の火山学勉強会

現職に就くまでの経緯
研究を始めた2014年以降、御嶽山や阿蘇山で噴火が発生し、防災・減災や現象の解明のためには定常的な観測が重要だと思うようになりました。観測データを解析して現象を解明する研究も大切ですが、それを支える基礎的な観測やデータ・情報の提供に関する仕事に携わりたいという気持ちが徐々に強くなり、国土地理院に就職しました。


写真3:硫黄島での水準測量

現在の仕事内容
2018年4月に国土地理院に就職し、4年目から測地部宇宙測地課という部署に所属しています。ここでは衛星測位技術であるVLBIやSARに関わる業務を行っており、私は主にSARデータの解析や火山噴火予知連絡会などに提供する資料の作成を行っています。SAR解析では異なる時刻に撮影されたSAR画像を干渉解析することで地殻変動を面的に検出することができます。国土地理院ではこれまでSARデータの定常解析・緊急解析を実施し、地震・火山活動による地殻変動や災害状況の把握に貢献してきましたが、2021年度からは国内38活火山における干渉SAR時系列解析結果の一般公開を開始し、火山地域の地殻変動を時空間的に把握することができるようになりました。

仕事の中で活きた学生時代の経験
2021年10月に発生した阿蘇山の噴火についてSARデータの緊急解析が行われたときに、部署内で阿蘇山に詳しい人が少なかったため、解析結果の判読に私の大学時代の知識が役に立ちました。
また、国土地理院では様々な測地観測データが蓄積されており、業務に関する調査・研究もできます。先日も、口永良部島・焼岳・阿蘇山の干渉SAR時系列解析結果で見られる火口周辺の地殻変動について、業務の合間に圧力源推定をやっていたところ、それが上司の目に留まり、この内容について学会で発表することができました。このデータ解析から発表に至るまでの一連の流れは研究室生活で得た知識や経験がそのまま役に立ったものでした。


写真4:SARデータ解析業務の様子

後輩達に向けて
私はこれまで直感的に進路を選んできましたが、今でもそれらの選択に後悔はしていません。後輩の皆さんも、面白そうだと思ったことはどんどんチャレンジしてほしいです。仮に失敗してもそこで学んだことは今後の自分の糧になりますし、若いうちに幅広く学ぶことが大事だと感じています。京大の理学部では、色んなことにチャレンジできる環境があるので、その環境を活かして学生生活を楽しんで下さい。

(インタビュー日:2022年2月17日/聞き手:長縄和洋・風間卓仁)

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