竹下愛実さん（気象予報士・野菜ソムリエ）

地球惑星科学専攻での研究を通して

気象予報士・野菜ソムリエ　竹下愛実
（2011年度地球惑星科学専攻修士課程修了）

写真1：小学校での環境出前授業の様子

系登録で地球惑星科学専攻を選んだきっかけ
理系科目の勉強自体があまり得意ではなかったので、数学や物理や宇宙物理は志望したとしても落ちるだろうし、生物はそもそも高校からすでに履修していないし…という具合で、ほとんど消去法で地球物理でした。その中でも固体よりは流体に興味があったので、地球惑星科学を選びました。

気象学研究室を選んだきっかけ
もともと地球惑星科学の中でも漠然と海洋よりは大気に興味がある…くらいの方向性しかなかったため、事前にいくつかの研究室の教授を訪ねて話を聞きました。その中で当時、気象学研究室の教授だった余田成男先生（現・名誉教授）のお話が一番よくわからなかったというか、何を言っているのか謎すぎたので、この先生の研究室に行ってみようと思いました。ちなみに実際に研究室に所属してからも余田先生の話は謎だらけでした。

大学・大学院での生活
大学とバイト先を往復する毎日を送っていました。学部生のときは教員免許に必要な単位を取るための講義で時間割が忙しかったものの、院に進んだあとは多少自由が利くようになり、それまで興味があったけどなかなか受けられなかった芸術学や法学の講義を沢山聞きました。京大ではほぼすべての分野の講義が最先端かつ最高峰ですから、学生のうちに少しでも多く吸収しておくのがおすすめです。

これまでの仕事内容
修士課程修了後、いったん事務職に就きましたが、その後気象キャスターに転職しました。気象予報士の資格自体は学部生のときに取っていたので、テレビ局のオーディションを受けて、はじめは三重テレビ放送、NHK仙台放送局、そして千葉テレビやとちぎテレビなど各局で計8年ほど気象情報を担当しました。

写真2：NHKのスタジオにて

現在の仕事内容
フリーランスの気象予報士・防災士として、講演・執筆活動をしています。各地の小中学校で講演やお天気教室を担当したり、書籍の出版や、ネットニュース（Yahoo!ニュースやLINEニュースなど）で気象・防災関連の記事を書いたりしています。また、趣味の料理の延長線上で野菜ソムリエ・食育インストラクター・薬膳マイスターの資格を取った結果、気象と料理の2足のわらじを履くことになり、食品メーカーや料理サイト向けのレシピ開発や、出張料理（一般家庭での作り置き料理代行）などの仕事もしています。

写真3：大学生を対象にキャリアパス講演

理系に進んだ女性として
他の分野ではわかりませんが、地球惑星科学専攻において女性であることが不利だと感じたことはありません。むしろ就活のときは、企業でも役所でも「女性を〇割採用しないといけない」という目標がある中で理系の女子学生は絶対数が少ないので（修士まで出ている場合は特に希少価値）、有利に作用すると考えた方がいいと思います。一方で、就職したとしても研究者になったとしても、一定のキャリアを積み上げるまでにかかる年数の中で結婚や出産のタイミングに悩む人も多いと思います。気象学会など各学会では現在、人それぞれに合ったワークライフバランスを実現するためのサポートが充実していて、私自身も気象学会の男女共同参画・人材育成委員会で委員をしていますが、学会期間中に女性研究者・女子学生で集まってランチ会をしたり、男女問わずワークライフバランスについてざっくばらんに語り合う場を設けたりと、様々な取り組みをしています。以前と比べてアドバイスや助けを得やすい環境になってきているので、どんどん活用してもらいたいと思います。

写真4：男女共同参画・人材育成委員会の活動で
全国の女子中高生が集まる「夏の学校」にてポスター発表

京大で勉強・研究してよかったこと
とにかく「自分の頭で考える」力が鍛えられたことです。社会人になって痛感するのは、本当に困ったときは誰も助けてくれないということ。自分の持つ論理的思考力だけが頼り、という場面がいくらでもあります。京大の先生方からはその上で大事なことを沢山学びました。たとえば、「すべての物事には”前提”がある」ということ。そしてその前提が何なのかを見破る能力をつけるのが大学という場所だということ。また、指導教官だった余田成男先生からは「相手の脳に負担をかけない」ことの重要さを繰り返し強調して教えてもらいました。当時は主に学会でのプレゼンにおける極意としてでしたが、この教えはのちにキャスターとして番組を担当した際や、現在子どもたちに天気のことを教えたり一般の人向けにニュースを書いたりする際にも生き続けています。

（執筆日：2024年3月13日）