京都大学 大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻、理学部 地球惑星科学系

MENUMENU

竹村和人さん(気象庁地球環境・海洋部気候情報課)

地球惑星科学専攻での研究を通して

気象庁地球環境・海洋部気候情報課 竹村和人
(2009年度地球惑星科学専攻修士課程修了
2019年度より同専攻博士後期課程進学)

地球惑星科学に興味を持った理由
私は幼い頃から、自然現象、特に気象現象に興味がありました。小学生の頃には、1993年夏の記録的な冷夏に伴う米不足、1994年夏の記録的な猛暑・少雨に伴う深刻な水不足など、長期にわたる異常気象による生活への影響を身近に経験しました。このような経験より、なぜ夏や冬の天候が年によって大きく異なるのか、という疑問を持ったのが、気象学に興味を持ったきっかけだったと記憶しています。高校では、進路に迷うことはなく、「気象学」を学ぶことができる地球惑星科学科がある大学への進学を目指して、勉強しました。私の高校の理系クラスでは、地学を選択できなかったことから、独学で教科書や参考書を読んで勉強し、大学受験においても地学を選択しました。当時の気象現象への興味や、地学をもっと勉強したいという好奇心が、現在の私の職務や研究への意欲につながっていると思います。

大学院修士課程での研究生活
修士課程の研究では、異常気象をもたらす主要因として知られている、偏西風の大きな蛇行(ブロッキング現象)による大気大循環への影響とその予測可能性について、気象庁のデータを用いた解析を行いました。課程1年目の前半は、自らの研究課題に関してわかっていること、わかっていないことを把握するために、関連する数多くの先行研究の論文を読む日々でした。実際に手を動かして解析を進める際には、なかなか期待するような結果が出てこないことが多く、辛いなと感じることもありましたが、指導教官の向川 均先生や周囲の方々からの多くのサポートにより、解析結果を何とか修士学位論文として纏めることができました。

気象庁での航空気象観測・異常気象の要因分析にかかる業務
大学院修士課程修了後は、気象庁に入庁し、採用後2年間は中部航空地方気象台(中部国際空港内)において航空気象観測業務、その後約7年間は本庁地球環境・海洋部気候情報課において主に異常気象の要因分析に関する業務に携わってまいりました。特に本庁での業務には、大学院修士課程での研究で得た大気大循環に関する知見やデータ解析のノウハウを、最大限に活かすことができています。また、気象庁が運営している「異常気象分析検討会」という官学連携の仕組みを通して、大学の気候分野の先生方からご助言をいただきながら異常気象の要因分析を行うことが多く、学会等でその成果を発表する機会もあります。このため、私の業務内容は、いわゆるお役所仕事、というよりは研究や技術開発の分野に近いです。このほか、外国気象機関における季節予報業務の支援を目的とした、気候解析に関する気象庁の技術を海外に輸出(技術指導)する業務にも携わり、気象庁内での技術研修の講師や、国外への派遣研修を担当したこともあります。
気象庁には、気象に限らず、たとえば地震、火山等の分野においても、地球惑星科学専攻で得られた知見を活かすことができる場がたくさんあります。


写真 1:外国気象機関の関係者への気候解析プロダクトの紹介(於 気象庁)

写真 2:外国気象機関での技術指導(於 カンボジア気象局@プノンペン)

派遣研修としての博士課程への進学
現在は、気象庁からの派遣・研修制度を活用して、本専攻地球物理学分野の博士後期課程に進学し、日本付近における盛夏期の異常気象と関連する大気大循環の特徴について、研究しています。この進学は、気象庁の同僚や先輩方より、これまでの気候解析に関する経験を活かした博士号取得を薦められたことがきっかけです。派遣終了後は、博士後期課程での研究を通して得られた知見を、気象庁における業務に還元できるように努めてまいります。


写真 3:研究室での作業スペース

最後に
手元にあるデータを最大限に活用・吟味して、自然現象を解析し、先行研究で明らかにされていない現象の存在やそのメカニズムを調べることは、大変わくわくします。私の場合は、気象庁での業務を通して、この考えがさらに強くなり、博士後期課程への進学を決意しました。在学中の皆さんは、学部卒業あるいは修士課程修了後、就職して社会人になるのか、それとも大学院に進学して引き続き研究を行うのか、今後の進路に迷う方が多くいらっしゃると思います。研究に興味がある方には、是非修士・博士課程への進学をお勧めしたいですし、一方で、一度社会に出て業務を経験した後に研究の道を志しても、決して遅くはないと思います。この記事が、少しでも進路の決定における参考になれば幸いです。

(執筆日:2019年7月5日)

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