修士論文賞
地球惑星科学専攻では、平成22年度より、優秀な修士論文を顕彰することを目的として、当専攻(分野)の教員が修士論文と発表会の内容を総合的に評価し、地球惑星科学専攻修士論文賞を授与しています。 これまでの受賞者と論文表題は以下の通りです。
令和5年度受賞者 NEW!
地球物理学教室
- 米田 匡宏:電離圏中性大気観測に向けた質量分析器の開発
- 吉川 浩一朗:ラングミュア乱流が海面加熱時の混合層に及ぼす影響の評価
- 伊藤 良介:スパース正則化を用いた磁化構造解析手法の開発と実データへの適用
地質鉱物学教室
- 横井 雅範:沈み込みスラブ上面における含ホウ素流体―岩石反応の時期:三波川変成帯の例
写真:米田/斎藤(准教授)
写真:吉川/吉川(教授)
写真:伊藤/宇津木(准教授)
写真:河上(教授)/横井/東野(助教)
米田 匡宏さんのコメント
この度は修士論文賞を頂戴し、大変光栄に存じます。私の研究テーマは観測装置の開発であり、研究としては未だ途上にあるにもかかわらずこのように評価いただけましたのは、指導教員である齊藤昭則准教授、そして宇宙科学研究所の齋藤義文教授をはじめとした諸先生方のご指導のおかげに他なりません。心より感謝申し上げます。
観測装置を設計して実験を繰り返す日々は、机上の理論が再現される様を目の当たりにできる面白さに溢れていましたが、想定外の不具合に遭遇したりすると気分が落ち込むこともありました。ですが、装置が自分の手が届かない高度100km以上に到達して物理量を測定することを想像すると、なんだかわくわくしてきます。今後もこのわくわくを糧に、得られたデータの解析を自ら行う日まで精進する所存です。
最後になりますが、私のこれまでの研究生活を支えてくれた研究室の皆様、友人、そして家族に改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。
吉川 浩一朗さんのコメント
この度は修士論文賞をいただき、大変光栄に思います。ご指導くださった吉川裕教授をはじめ、海洋物理学講座の皆様に感謝申し上げます。「乱流自体は小規模だけれど、海面水温などを通して大規模な影響をもたらしうる」というロマンに惹かれ、「渦や乱流をやりたい!」という気持ちを持っていた私が、吉川先生に提案いただいた研究テーマが「ラングミュア乱流」でした。実は学部3年生の時から「ラングミュア循環・乱流」という名は吉川先生の書かれた総説で存じ上げておりましたが、よく知らない私は「こんな感じで総説になるのなら、もう研究の余地はないんだろう」と勝手に思っていました。そのためラングミュア循環という名に再会したときには驚きましたし、それをテーマにできるということに嬉しさを感じました。そこから3年間の研究生活は大変ではありましたが、海洋物理学講座の暖かい雰囲気のおかげで、研究を楽しんで過ごすことができました。今後は博士後期課程として、引き続き海洋物理学研究室で研究に邁進していきたいと考えております。
伊藤 良介さんのコメント
この度は名誉ある修士論文賞をいただき大変光栄に思います。指導教員である大倉敬宏教授、吉村令慧教授、宇津木充准教授をはじめ、修士課程における研究を支えて下さった皆様に厚く御礼申し上げます。地上で観測された磁気異常から地下の磁化強度分布を推定する磁化構造解析には長い歴史があり、特に地下浅部の構造推定に非常に有用ですが、日本では近年研究される方が減少しています。しかし、線形問題であるため手法開発が行いやすく、可能性を秘めている分野だと感じています。まだまだ道半ばではありますが、紙とペンを使って解析のイメージを膨らませ、それをもとにsynthetic
testを実施するという地道な作業を繰り返した末に生まれた本研究の成果が、今後の磁化構造解析の発展の一助となれば幸いです。
最後になりますが、家族をはじめお世話になった全ての方々に心より感謝申し上げ、受賞メッセージとさせていただきます。ありがとうございました。
横井 雅範さんのコメント
この度は修士論文賞を賜り、大変光栄に思います。この受賞は指導教員の河上哲生教授や東野文子助教をはじめとする岩石学講座の皆さんのご指導やご助言の賜物です。皆様に深く感謝申し上げます。私の修士論文では、沈み込みスラブにおける物質の混合の性質についての研究を行いました。なかなかテーマが定まらない苦しい時期がありましたが、岩石学講座の皆さんとの日頃の議論で進むべき方向が見えました。また、河上教授には日頃の対話で岩石学に関する知識や技術のみならず、科学的な世界の見方を教えていただきました。このように素晴らしい先生方や仲間たちのお陰で人間的にも成長できたと感じています。これからも多くの人々と対話し、自然に対する洞察力を高めて、社会に貢献できるよう努力して参ります。
過去の受賞者
過去の受賞者の情報は こちら をクリックすると閲覧できます。
令和4年度受賞者
地球物理学教室
- 岡崎 康平:球面上の非内挿セミラグランジュ移流スキームの改良
- 加藤 ふみ:衛星データを用いた熱帯季節内振動に伴う海洋大陸上での降水変動についての解析
- 山科 佐紀:南極観測船「しらせ」搭載オーロラ・大気光撮像システムの開発と観測
- 漁野 光紀:2次元球面上のEuler乱流に対する統計力学的平衡状態の新しい数値計算法の提案とその応用
地質鉱物学教室
- 田中 凌悟:粒子配列解析から推定されるハイブリッドイベント層の堆積構造の成因: 房総半島に分布する更新統大田代層の例
- 三津川 到:タヒチ島産カンラン岩中に新たに見出した白金族鉱物と高分子炭化水素が共存する包有物
- 善本 夏実:領家変成帯の泥質ミグマタイトのザクロ石中のC-O-H流体包有物から示唆される部分融解した広域変成帯への複数回の流体流入
写真:岡崎/榎本(教授)
写真:加藤/重(准教授)
写真:山科/斎藤(准教授)
写真:漁野/石岡(教授)
写真:成瀬(准教授)/田中
写真:三宅(准教授)/三津川/伊神(助教)
写真:東野(助教)/善本/河上(准教授)
岡崎 康平さんのコメント
この度は修⼠論⽂賞をいただきありがとうございます。この場をお借りして、2年間の修⼠研究を⽀え続けてくださった指導教員の榎本剛教授、常に切磋琢磨し合えた宇治の研究室の学⽣の皆さんにお礼を申し上げます。⾮内挿セミラグランジュ法というテーマは、30年前に提案されてから今まであまり注⽬されなかったテーマでした。運よく改善⽅法を思いつき、成果を得られたことはとても幸運でした。最後になりましたが、家族をはじめ私を⽀えてくださったすべてのみなさまに感謝します。
加藤 ふみさんのコメント
この度は名誉ある修士論文賞をいただき、誠にありがとうございます。指導いただいた重尚一准教授、またゼミで多くのアドバイスをくださった大気分科の先生方に深く感謝いたします。
重先生に教えていただいたことで一番印象に残っているのが、言葉の使い方です。学会要旨やスライド、修士論文では何度も添削していただきました。そこで適切な言葉を選び、受け手に内容がストレートに伝わる一貫した文章を書くことがいかに難しいかを学びました。研究室での三年間を通じて、研究に真摯に向き合われている方の世界に少しだけ触れることができ、自分にとってかけがえのない経験となりました。
最後に、こうして試行錯誤した結果を、尊敬する先生方にこのように評価していただき、本当に嬉しく思います。最高の締めくくりになりました。今後も精進します。
山科 佐紀さんのコメント
この度は修士論文賞を頂戴し、誠にありがとうございます。この場をお借りして、温かく常に的確なアドバイスをくださった指導教員の斎藤昭則准教授及び共同研究者の皆様、学内外の先生方に厚くお礼を申し上げます。また、充実した研究生活を共に過ごした先輩同期後輩の皆さんにも感謝致します。私は観測装置のシステム開発から携わらせていただきましたが、開発には多くの苦労を伴い、途中で投げ出したくなることもありました。しかし最後までこだわり続けた結果、実際に自分が組んだシステムが稼働し南極からデータを持って帰国した時の達成感は忘れられません。また観測の運にも恵まれ、興味深い結果を得られたことも嬉しく思います。学部4回生を含めた3年間の研究生活では、研究に関する知識だけでなく、日々の努力の大切さや、論理を隅まで突き詰める難しさと楽しさを学びました。この経験を糧に今後様々な環境でも精進していきたいと思います。
漁野 光紀さんのコメント
修士論文賞を頂くことになり、ありがとうございます。
学部の卒業研究で地球流体に関する応用数学的研究をしたいと考えていた私が、石岡圭一先生のもとで研究指導を受けることになり、そこで提案していただいたテーマが「2次元乱流の統計力学理論」でした。流れのパターンを統計力学で解釈する理論の面白さ、当時興味を持って学んでいた幾何学との相性の良さを感じ、非常に楽しそうなテーマだと思いました。統計力学的平衡状態の数値計算という課題は約25年前に石岡先生が取り組まれていたもので、修士論文の研究はそのリバイバルと言えます。そのようなヒストリーのある研究に取り組み、石岡先生とともに修士論文として成果を結実させられたことに大きな喜びがあります。
2次元流体の理論は地球物理学としては古典的なテーマですが、まだ不明な点も多く残っています。私の研究を通して、2次元流体の面白さや奥深さが伝わればうれしいです。
田中 凌悟さんのコメント
この度は修士論文賞をいただき大変光栄に思います。私が研究でこのような成果をあげることができたのも、指導教員の成瀬先生をはじめ、ゼミの先生方や先輩・後輩という周りの方々のおかげであると思っています。学外では、東京大学千葉演習林の方々や地域の方々にもお世話になりました。この場を借りまして、深く感謝申し上げます。私は修士課程からこの京大地鉱教室で研究を始めることとなりました。学部時代には知らなかった機械学習を使った研究に戸惑いながらも新たな世界を開くことができて、非常に大きな学びを得たと思っています。さらに、研究以外でも、先生や先輩方の研究に対する姿勢や物事の考え方など多くのことを学び、大変恵まれた環境で2年間を過ごすことができたと思っています。今後は、学んだことを活かして社会に貢献したいです。改めまして、支えてくださった皆様、ありがとうございました。
三津川 到さんのコメント
この度、修士論文賞をいただきましたこと大変光栄に思います。指導教員の三宅亮准教授や伊神洋平助教をはじめ、多くの方にご協力いただき、研究を進めることができました。この場をお借りして深く感謝申し上げます。私は、地球のマントルに由来する岩石であるカンラン岩中に分布する微小な鉱物を対象に研究を行ってきました。修士課程での2年間を通じて最先端の分析技術の威力を何度も目の当たりにし、先人が築き上げてきた技術力の高さに驚かされてばかりでした。得られた結果を解析していく作業は、まさに「巨人の肩の上に立つ」気分で、とても楽しく2年間の研究に取り組むことができました。今後は博士課程に進学し、引き続き研究を行っていきます。サポートしてくださる全ての方々と恵まれた環境への感謝を忘れずに、研究者として研鑽を積んでいきたいと思います。
善本 夏実さんのコメント
この度は修士論文賞をいただき大変嬉しく思います。私は学部4年生から修士2年生までの3年間、岩石が高温の変成作用を受けて部分的に融解するときに共存した流体について、岩石試料を細かく観察・分析するという手法で調べてきました。思い込みを取り払い、天然の試料から正確な情報を得ることの難しさと大切さを知りました。
この度の受賞は、河上先生をはじめ、東野先生、研究室のメンバー、学会で意見をいただいた方々のおかげです。指導教員の河上先生には一から丁寧にご指導いただきました。エネルギーあふれる先生のもと、変成岩の面白さに触れることができたのはとても貴重な時間でした。
この3年間は今までの人生では得られなかった経験の連続で、苦しいときもありましたが、振り返ると自分の内面も大きく成長したように思います。今後の人生で必ず支えになると確信しております。素晴らしい環境に身を置けたこと、お世話になった方々に心より感謝申し上げます。
令和3年度受賞者
地球物理学教室
- 今村 春香:水面波による混合の強度とメカニズムに関する実験的研究
- 田旗 栄太:古第三紀始新世の地形変化による海洋熱塩循環場変化とその力学機構について
- 沢口 航:月周辺におけるホイッスラーモード波のスペクトルについて─Rising toneの存在とスペクトル形状の空間分布
地質鉱物学教室
- 片山 喜登:芦生研究林におけるスギ・サワグルミの年層内同位体比変動による高分解能古気候復元の可能性
- 池田 勇人:単一試料中に共存する反時計回りと時計回りの温度圧力履歴を示唆する変成組織―東南極セール・ロンダーネ山地ブラットニーパネの例―
- 山崎 あゆ:完晶質な深成岩形成過程におけるメルト中の主要元素拡散―珪長質岩および中間質岩からなる複合岩脈の鉱物化学組成からの制約―
写真:左から今村春香/吉川裕(教授)
写真:左から田旗栄太/吉川裕(教授)
写真:左から原田祐己(助教)/沢口航
写真:片山喜登
写真:左から河上哲生(准教授)/池田勇人/東野文子(助教)
写真:左から河上哲生(准教授)/山崎あゆ/東野文子(助教)
今村 春香さんのコメント
この度は修士論文賞をいただきありがとうございます。この賞は、指導教員の吉川先生の熱心なご指導の賜物です。私の研究は、研究で使用する数値モデルを先行研究を参考に自分で作成することから始まりました。数値モデルについて初心者の状況から始めたので、特に修士1回生の1年間は上手く行かないことの連続でした。共に根気強く考え議論し、はげましてくださった吉川先生、学生同士で学び合いながら明るく研究に向き合う研究室の雰囲気に支えられ、研究が進まないときにも諦めずに取り組むことができました。自分の手で 苦労して作り上げた数値モデルで数値実験を行い、得られた結果を解析して面白いものが見えてきたときの喜びはひとしおでした。このようにして得られた成果を評価していただき、とても嬉しく思います。吉川先生には研究指導に加え、観測 機器の設置や乗船実習等の機会を与えていただき、海洋という研究対象の広がりや奥深さを実感することができました。また、藤原泰さんをはじめ研究室の先輩方からは、卒業後も研究のサポートや様々な角度からのご意見をいただき、嬉しくありがたく思います。これまでの経験や人とのつながりを大切にこれからも精進します。最後になりましたが、家族をはじめ、近くから遠くから私を支えてくださったすべてのみなさまに感謝します。
田旗 栄太さんのコメント
この度は名誉ある修士論文賞をいただき、誠にありがとうございます。今回の受賞にあたり、この場をお借りして、2年間の修士研究を支え続けてくださった指導教員の吉川裕教授、研究室のゼミナールでお世話になった秋友和典名誉教授、根田昌典助教、そして常に切磋琢磨し合えた研究室の学生の皆さんにお礼を申し上げます。京大海洋物理学研究室初の古海洋学(しかも古第三紀始新世というマニアック?な)ということもあり、右も左も分からないところからスタートし、自分がどこに進んでいるのかどこに進みたいのかがわからなくなってしまったこともありましたが、それでも吉川先生との幾度のディスカッションのおかげで、一貫した研究方針を作り上げていくことができましたし、海洋物理学に関する知識や地球流体力学的なものの見方などを教えていただけました。私の要領が悪いばかりに吉川先生とのディスカッションや研究室のゼミナールでは多くの時間を割かせていただきましたが、その経験のおかけで研究の進め方や注目ポイントの正確な見定めなど、研究者として必要な力を付けることができました。今後はこの2年間で培われた力を十分に活かして地球環境に貢献していくことで、先生方や研究室の皆さんへの恩返しとしていこうと考えていますので、ますます精進していこうと思います。
沢口 航さんのコメント
この度は修士論文賞をいただき、大変光栄に思います。研究に関してアドバイスをいただいた学内外の先生方、特に指導教員として何から何まで面倒を見ていただいた原田裕己助教のご助力のおかげです。本当にありがとうございました。月電磁波動の非線形成長というテーマは、未開拓の領域かつ月プラズマ物理と波動生成理論の2つの分野にまたがる研究ということで、誰も全貌を知らない、あるか無いかも分からないものを暗中模索で探すところから始まった研究でした。地道な努力の甲斐あって、実際に「月コーラス」を発見でき、賞をいただける程の成果を得られたことはとても幸運なことです。これからの社会生活においてもきっと「初めての挑戦」が多く待ち受けているでしょうが、この経験を自信に変えて前向きに頑張っていこうと思います。
片山 喜登さんのコメント
この度は修士論文賞を賜り、大変嬉しく思います。私の修士論文のテーマは、樹木年輪から過去の気候を詳細に復元することでした。近年、世界的に地球温暖化に高い関心が寄せられ、真鍋淑郎先生がノーベル物理学賞を受賞されたことも記憶に新しいですが、気候予測モデルの検証には過去の気候の情報が役立ちます。研究で行う作業は緻密かつ地道なもので中々気が進まないことも多かったですが、真鍋先生の受賞で研究の意義を改めて感じることができ、勝手ながらも励みに感じていました。また、指導教員の渡邊裕美子先生をはじめ、名古屋大学の中塚武先生、研究員の李貞さんなど、学内外の多くの方々のご指導・ご支援のおかげで修士論文を執筆することができました。皆様に心より感謝申し上げます。
池田 勇人さんのコメント
この度は、修士論文賞を頂戴し大変光栄に思います。研究を進めていく中でたびたびその大局的な意義を見失いながらも修士論文を書き上げられたのは、指導教員である河上哲生准教授の厳しくも思いやりにあふれた温かいご指導のおかげに他ならず、感謝してもしきれません。また研究に行き詰まった際、研究室のメンバーとはコーヒータイムなどに議論を交わし、考えが整理されもう少し頑張ろうという元気をもらえました。振り返ると仲間にも恵まれ非常に充実した2年間でした。修士の生活を通じて、河上先生の熱意を持って研究に取り組む姿勢を間近で見られたことや、研究の楽しさ、粘り強く課題に取り組むことの大切さ、仲間と語らうことの大切さを知れたことは、私にとってかけがえのない財産です。今後困難に突き当たった際も、この財産を糧に鼈のように粘り強く立ち向かっていく所存です。
山崎 あゆさんのコメント
この度は、修士論文賞を頂き大変嬉しく思います。本賞の受賞は、ご指導くださった河上哲生准教授をはじめ、東野文子助教や、ゼミや学会で意見をくださった方々のおかげです。厚く御礼申し上げます。私は天然の深成岩に記録された、メルト中での元素拡散について研究してきました。この研究を通して、天然試料が示す複雑な情報を読み解く難しさと、天然だからこそ想定外の発見をする面白さを味わうことができました。研究の着地点が見えず悩んだこともありましたが、岩石学講座の学生が真剣に研究に取り組み、学年関係なく議論を交わす姿に励まされておりました。また、地鉱教室の皆様の優しいお心遣いにも支えられました。このような素晴らしい環境で研究に取り組めたことを、心より感謝いたします。
令和2年度受賞者
地球物理学教室
- 岡田 悠太郎:GNSSデータを用いた短期的スロースリップイベントの検出手法の開発と南海沈み込み帯への適用
- 西野 圭佑:海洋表層混合層乱流が粒子の凝集・分裂を通して物質輸送に及ぼす影響に関する数値実験
- 桃木 尚哉:新しい木星磁気圏磁場及びカレントシートモデルの構築とそれらの長期変動に関する研究
地質鉱物学教室
- 石井 さよ:海底扇状地の塊状砂岩の形成過程―深層学習画像測定による粒子配列解析に基づく検討―
- 牛丸 健太郎:地質構造と古応力解析から明らかになった天草地域の始新世~中新世テクトニクス
- 尾上 裕子 :高速滑り速度下での石英質岩の摩擦挙動に及ぼす湿度の影響
写真:左から岡田悠太郎/西村卓也(准教授)
写真:左から西野圭佑/吉川裕(准教授)
写真:左から桃木尚哉/藤浩明(准教授)
写真:左から石井さよ/成瀬元(准教授)
写真:左から牛丸健太郎/山路敦(教授)
写真:左から尾上裕子/堤昭人(准教授)
岡田 悠太郎さんのコメント
この度は修士論文賞をいただき,大変嬉しく思います.私の研究がこのような評価をいただけたのは,第一に指導教官である西村卓也先生の温かいご指導のおかげです.また日頃のセミナーや学会において,私の研究についてご意見をくださった先生方や学生の皆様のおかげでもあります.厚く御礼申し上げます.修士課程の2年間は思ったような結果が出なかった時期でさえも,ひたすらに研究活動を楽しんだ期間でした.このような素晴らしい時間を過ごせたのは,ほぼ毎日のように研究に関する議論にお付き合いいただいた西村先生や研究室の先輩方のおかげです.この経験が私の研究を何段階も向上させたと思っています.また西村先生には山陰や三宅島への観測に連れて行っていただきました.GNSSデータが観測される現場に実際に行くことで,自分が使用するデータに対する理解を深めることができました.最後になりますが,私がのびのびと研究することができたのは,所属している防災研究所地震予知センターの皆様,学部時代を過ごした高知大学理学部災害科学コースの皆様,地元岡山の友人達や両親のおかげです.重ねて感謝申し上げます.
西野 圭佑さんのコメント
この度は伝統と名誉ある修士論文賞をいただき,誠にありがとうございます。本成果は,指導教員として熱心にご教授くださった吉川裕准教授,およびゼミで沢山のコメントをくださった秋友和典教授,根田昌典助教のご指導の賜物です。特に吉川先生には4回生時より,海洋物理や数値モデルの理論を基礎からご教授いただきました。改めて深く感謝を申し上げます。私の研究テーマ「海洋表層の粒子動態」は,4回生時に吉川先生からご提案いただいたものでした。当時の私は数値モデルに興味があり,学際分野ゆえ先行研究の充実していない「自由さ」に惹かれ,本テーマを選択しました。しかし以降の3年間では,その自由こそが敵でした。暗黙の道筋がなく白紙の土台だからこそ,その中で自分が「何を考え,意図して,どのように進めるのか」が強調される。それを理解し受容されるためには,得た結果をシンプルな説明へと昇華させなければならない。この研究者にとっては当たり前のことを3年間で体感・実感し,私は“研究の本質”に一歩近づけたような気がします。やっぱり研究の「自由さ」が好きな私は,春からは企業の研究者として再出発します。この3年間での学びは研究者生涯の糧として,心に深く刻み付けておく所存です。
桃木 尚哉さんのコメント
この度はこのような賞をいただき,ありがとうございます。最後まで妥協せずに研究,論文執筆をした結果がこのような形になり,非常に嬉しいです。修士では学部で行った研究を継続することになりましたが,研究室以外での問題もあり,修士1回では研究活動その他を思った様に行うことができず,特に同期や先生方にご迷惑をおかけしてしまいました。また修士2回ではコロナウィルスの影響でそもそも研究室に出向くことが難しく,自宅で孤独に研究をすることとなり,挫けそうになることもしばしばありました。そのような苦しい状況で私を励まして下さったのが,指導教官の藤先生でした。研究生活に本格的に復帰した際にも以前と変わらず接して下さり,また研究のみならず心身の状態まで気にかけていただき,藤先生には感謝しきれません。また,田口先生をはじめとした研究室の方々や家族にも,研究を遂行する上での助言や支援を多くいただきました。重ねて感謝申し上げます。この経験を糧として,これからも精進してまいります。
石井 さよさんのコメント
この度は、修士論文賞という大変光栄な賞をいただきありがとうございます。指導教員の成瀬元准教授をはじめとする、学内外のたくさんの方々のご指導・ご支援があり、本研究をここまで進めることができました。また東京学芸大学の西田尚央准教授には、私が堆積学に興味をもつきっかけを作っていただきました。お力添えをいただいたみなさまには、深く感謝申し上げます。私は修士1年目で他の大学からうつり、研究内容についてはゼロからのスタートでした。分からないことばかりでしたが、無事ここまで研究を遂行することができ、安堵しています。今後、自分の研究がさらに発展し、何らかの形で社会に貢献できたら嬉しく思います。
牛丸 健太郎さんのコメント
この度は修士論文賞をいただき,大変光栄に思います.私がこのような賞を受賞できたのも,ひとえに指導教官である山路敦先生の熱心なご指導を始め,学内外の様々な先生の方々,研究室の先輩方のご指導のおかげです.中でも山路先生には,野外でまさに露頭に迷う私に,一から調査の仕方や考え方を教えていただきました.また,先生方に限らず,野外調査の際には博物館の方々,地域の方々,両親のご支援していただきました.お世話になりました皆様に心より感謝申し上げます.私の修士研究は熊本県天草の地質を野外調査で検討したものです.野外での調査は体力的にもしんどく,またなかなか成果も得られず悩んだ時期もありました.しかし,地道な調査を重ねた結果,幸運にも既存研究を覆す発見ができました.やはり思わぬ発見がある事が,野外調査の面白みだと思います.今後は博士課程に進学しますが,感謝の気持ちを忘れる事なく,研究を続けていきたいと思います.尾上 裕子さんのコメント
この度は、修士論文賞を頂戴し光栄に思います。私は断層すべり時の純粋石英の摩擦特性について研究してきました。室内実験を繰り返し行う中で、大局的な研究意義を見失うこともありましたが、学会やゼミなどで様々な研究者の方々と意見交換を重ね、地質現象への多様なアプローチのひとつとして実験的研究を行っていることを実感しました。学部4回生から継続して研究を続けてきましたが、学生生活の集大成として無事に修士論文を書き上げることが出来ました。皆様に支えられ、非常に楽しく有意義な日々となりました。本賞の受賞は、丁寧にご指導くださった堤昭人准教授をはじめ、多くのご意見をくださった学内外の先生方や学生の方々、遠方より支援してくれた家族のおかげです。心より感謝申し上げます。
令和元年度受賞者
地球物理学教室
- 安藤 慧:3次元モデルを用いた中緯度域スポラディックE層の形成機構の解明
- 瀧下 恒星:落下速度観測による桜島ブルカノ式噴火の降下火山灰の噴煙分離高度分布推定
- 原 将太:深層学習によるP波の検出と到達時刻及び初動極性の決定
地質学鉱物学教室
- 奥村 翔太:マグマ上昇履歴の推定における輝石晶相分析の有用性について
- 鈴木 康太:Detailed analyses of the deep crustal metamorphism by utilizing Zr-in-rutile geothermometer
- 薮田 渉:沈み込み帯における岩相間の物質交換:九州八代産青色片岩相珪質片岩の実例
写真:安藤慧
写真:左から、 井口正人(教授)/瀧下恒星
写真:左から、 深畑幸俊(准教授)/原将太
写真:左から、奥村翔太/三宅亮(准教授)
写真:左から、 鈴木康太/河上哲生(准教授)
写真:左から、 薮田渉/平島崇男(教授)
安藤慧さんのコメント
このたびは修⼠論⽂賞をいただき⼤変嬉しく思います。指導教官の宮崎真⼀准教授、副指導教官の⿑藤昭則准教授、そして、品川裕之博⼠の御三⽅には特にお世話になりました。この場を借りて、改めて深く感謝申し上げます。今回の受賞は、⾃ら決めた道への責任感ゆえの賜物でありました。私は修⼠課程のはじめの半年間を、研究テーマ探しのために費やしました。数値モデルに興味があったので既存の電離圏モデルのコードをいくつも解読し、読みづらい英語論⽂に苦戦し、魅⼒的なテーマを求めて彷徨する毎⽇でした。テーマを定めた後でも、開発した数値モデルがうまく動かないことや計算結果の解釈が全くできないことがあり、ともすれば忸怩たる思いに駆られ、夜の⼤⽂字⼭を無⽬的に登り詰めた時もありました。しかし、⾃ら決めた研究テーマであるという責任感から、研究をする⼿は⽌めませんでした。今回の受賞を受けて、結果論に過ぎませんが、何かを⾃分で決めること、そして、それを最後までやり抜く意志を持つことの両者が⾮常に⼤切であることを再認識しました。
瀧下恒星さんのコメント
この度は修士論文賞という大変光栄な賞をいただき,ありがとうございます。本賞の受賞は日本で最高の観測環境である桜島に火山観測所を設置・発展しご指導くださった諸先生方や職員の皆様,特に観測機器の貸与から私の拙い日本語の繰り返しの添削に至るまで手厚い指導をしてくださった井口正人教授,また,フィールドワークの楽しさを教えてくださった海城中・高地学部(当時)の上村剛史先生,「自由を尊重し,既成の権威や概念を無批判に受け入れず,自ら考え」る姿勢を叩き込んでくれた京都大学吉田寮の皆様,孤独な夜にともに遊んでくれた鹿児島県の飲み仲間の皆様,そしてここまで自由に育ててくれた両親なくしてはなしえませんでした。受賞の報せを頂いて非常に舞い上がっておりますが,同時にある飲み会で井口先生が,賞をもらうことよりも自分が自身の研究に納得できるかどうかのほうが重要である旨をおっしゃっていたのを思い出しています。本研究は不完全な点も多々ありますので,博士課程のうちに納得できる研究になるよう精進いたします。これから研究室を選ぶ学生の皆様は是非一度鹿児島に来て桜島と街の近さを体感してください。
原将太さんのコメント
この度は修士論文賞をいただき、大変光栄に存じます。私の研究がこのような評価をいただけたのは、ひとえに深畑幸俊准教授をはじめとする地震予知研究センターの皆様のおかげです。お世話になった皆様に深く感謝申し上げます。私にとって、研究生活で最も重要なことはコミュニケーションを取ることでした。研究センターの皆様は普段から私の些細な雑談に付き合って下さり、そのおかげで地球物理学の見識を深めることが出来ました。指導教員の深畑先生には、私が研究を進める度、原稿を書き進める度に議論する時間を沢山いただきました(アポ無しで!)。また、普段からお喋りすることは研究発表の際に効果を発揮し、発表でも質疑応答でも自信有り気に話すことが出来ました。最後に、私が修士の2年間で様々な経験をさせていただいたのは、京都大学内外の先生や学生の皆様、昔からの友人や遠方から支援してくれた家族のおかげです。重ねて感謝申し上げます。
奥村翔太さんのコメント
この度は、修士論文賞をいただき大変光栄に存じます。本研究の受賞は、指導教員の三宅亮准教授をはじめとして、学内外の先生方や研究員の方々のご指導・ご助言や、学生の皆様からのご支援があってのものであり、皆様には深く感謝申し上げます。本研究を進める上では、研究内容も含めて、かなり私の自由に(思いつくまま)させていただけたので、非常に楽しみながら研究に打ち込むことができました。一方で、研究内容の要所の多くは、先生方からのご助言があって初めて着想を得たものであるため、先生方には心より感謝すると同時に、私自身の未熟さを痛感する次第であります。これまでに頂いたご指導・ご助言を糧に、博士課程では一研究者として名乗れるように精進して参ります。最後に、私がここまで成長できたのは、京大鉱物学講座という環境で、たくさんの優秀な方々から学ぶことができたおかげだと考えております。お世話になりました皆様に加え、遠方より支援してくれた家族にも、重ねて感謝申し上げます。
鈴木康太さんのコメント
このたびは修士論文賞をいただき、大変光栄に思います。私の研究は、岩石微細組織の解析に加えて、鉱物の微量元素濃度に着目することで、地殻深部の情報を高解像度で読み取ろうというものです。分析に適した鉱物粒子を見つけ出すため、何百粒子もの微細な鉱物の観察を行うなかで、目の前のことばかりに気を取られ、研究の意義を見失ってしまうことが何度もありました。そのたびに指導教員の河上哲生准教授は、常に広い視野を持って研究を進めることの大切さを教えてくださいました。また、岩石学講座の先輩や後輩との定期的な議論のおかげで、客観的な意見や新たな気づきを得ることができました。学内外の多くの方々に助けられて、修士論文をまとめることができました。深く感謝申し上げます。博士後期課程では、広い視野を持って研究を進めるのはもとより、学生間のコミュニケーションをもっと活発にすることで、講座全体を盛り上げてまいります。
薮田渉さんのコメント
この度は,修士論文賞受賞の御光栄に与り,誠にありがとうございます。私の研究は,地震・火山活動の最前線である沈み込み帯(日本列島など)における,物質の循環がメインテーマです。以前の研究では,ほとんど扱われて来なかった珪質片岩という岩石を題材に,多くの珍しい鉱物やその消長を紐解き,沈み込み帯で多様な岩石が水や酸素といった物質のやり取りをしているという,新たな実像に迫ることができました。先行研究が少なく,手探り状態の所も多く有りましたが,指導教官の平島崇男教授には,ご多忙の折にも常に気に掛けて頂き,鉱物の化学式や他地域の情報など,幅広いご経験から助言をいただき,一つ一つ解決することができました。研究生活の中で感じた最も大きな喜びは,地球科学という比較的若い学問だからこそ味わえる,(小さいながら)フロンティアに触れられる,という実感です。今後この分野を志す皆様にも,この醍醐味を知っていただければ幸甚です。末筆ながら,時に笑い合い,時には研究に関し厳しくご指導いただいた岩石学研究室の皆様,そして何より,平島先生に,心より御礼申し上げます。これからも,研究を通じて培った,未知の課題にも継続して取り組む強い意志をもって,引き続き精進してまいります。
平成30年度受賞者
地球物理学教室
- 秋山 静佳:衛星搭載二周波降水レーダを用いた海洋上温帯低気圧に伴う強い固体降水帯の解析
- 三宅 雄紀:粘弾性媒質中での地震サイクルシミュレーション手法の開発
- 柳瀬 友朗:高解像度放射対流平衡実験における積雲アンサンブルの統計的性質
地質学鉱物学教室
- 河野 颯:星雲ガスの凝縮を模擬したFe-Mg-Si-O-S系での凝縮実験:GEMS形成環境の解明に向けて
- 浅田祐馬:太陽風による宇宙風化を模擬したエンスタタイトへの水素イオン照射実験
- 葛立恵一:高温低圧型変成帯における部分溶融岩中のジルコンの形成過程―領家帯三河地域及び小豆島讃岐東部地域の例―
写真:左から、重 尚一(准教授)/秋山静佳/
写真:左から、三宅雄紀/野田博之(准教授)
写真:左から、竹見哲也(准教授)/柳瀬友朗/
集合写真
写真:左から、浅田祐馬/土`山 明(教授)/河野 颯
写真:左から、河上哲生(准教授)/葛立恵一
秋山静佳さんのコメント
この度は修士論文賞をいただきまして,非常に光栄に思います.私の研究内容は衛星データの解析でしたが,はじめのころは,自分がやろうとしていることの位置づけや,扱っているデータ・解析手法に対する理解が浅く,解析があまりうまくいかない日々でした.しかしなんとか修士論文までまとめることができたのは,衛星観測や気象現象に関する先行研究に数多く触れつつ,その一方で地道にデータと向き合えたからだと思います.このように研究がすすめられたのも,指導教員の重先生をはじめとする物理気候学研究室の方々から親身にご指導いただけたおかげです.特に私は作業をしていると目の前しか見えなくなりがちですが,ときには物事を俯瞰してどこが重要か見極める力が必要だと実感しました.周りの方から意見をいただくことで初めて自分の持っている結果の面白さや重要性に気付き,研究の指針を得ることが非常に多かったです.多くの人に支えられてここまで研究をすることができました.深く感謝申し上げます.
三宅雄紀さんのコメント
この度は修士論文賞を頂き、大変嬉しく思っております。このような評価を頂ける研究ができたのは、第一に指導教員である野田博之准教授の丁寧なご指導の賜物です。また、地震予知研究センターの先生方や学生、職員の方々には日頃から大変お世話になり、感謝の念が絶えません。修士課程で様々な経験をさせて頂いた身として、伝えておきたい後輩へのアドバイスが、「自分の研究発表についての感想を色々な人から聞く」ということです。先生方や学生の方々からそのような感想をいただく機会が多く、短時間の発表で研究内容を伝えることの難しさを知りました。試行錯誤するうちに、本当はたくさんある伝えたいことを、なるべく絞って簡潔にした方がかえって研究の面白さが伝わりやすいことに気付きました。大学院という、どんどんとフィードバックを受けられる恵まれた環境だからこそ、恥を捨てて色んな人の意見を聞くのが成長への近道だと感じた次第です。
柳瀬友朗さんのコメント
修士論文賞をいただき誠に光栄に思います。指導教官の竹見哲也先生をはじめとする暴風雨・気象環境研究分野の皆様、貴重な助言をくださった学内外の先生方、また遠方から支えてくれた家族に深く感謝申し上げます。振り返ると、はじめは教科書や論文を読む時に「既に何がわかっているのか」という部分を追うことばかりに精一杯になってしまいがちでしたが、一方で徐々に「まだ何がわかっていないのか」という部分にもより注目すべきだと思うようになりました。自分が知りたいことに関して、まだ誰も知らないことが沢山あるというのは、なにより研究のモチベーションにもヒントにもなります。また、些細なことでも議論や相談の相手となってくれる方々に恵まれた研究生活でした。人と議論することは自分の考えや物事の解釈を言葉にまとめるきっかけになりましたし、素朴な疑問を解決したり一緒に考えることで物事の理解が深まったと思います。最後に、自分の研究テーマに関してまだまだわからないことだらけなので、修士論文賞を励みに今後も雲や対流・乱流の理解を深める面白い研究ができたらと思います。
浅田祐馬さんのコメント
この度は、修士論文賞を頂き、大変嬉しく思っております。本研究がこのような評価を頂けたのも、指導教員の土`山明教授や瀧川晶特定教授の熱心なご指導と、学内外を問わず、たくさんの先生方や研究員の方々、学生の皆様からのご支援があってのことです。お世話になった皆様に厚く御礼申し上げます。小惑星探査機はやぶさが地球に帰還して話題となった2010年当時、私はまだ高校生で、隕石だけでは飽き足らず、「生」の石を宇宙から持ち帰ろうとした研究者の情熱に感銘を受けました。縁あって、その中でも最前線でご活躍されてきた土`山明教授のもとで研究ができることになり、当時テレビ越しに感じた「研究者魂」を身近に感じながら、自らの見聞を広めることができました。また、ほんの少しですが、高校生の時に憧れたこの分野に携わることができたことは、私にとってかけがえのない財産です。本学での経験を糧にして、これからも精進して参ります。
河野 颯さんのコメント
このたび、修士論文賞をいただき大変光栄に思います。本賞の受賞は指導教員の土`山先生をはじめとして、様々な方のサポートがあってのものです。お世話になりました皆様には心より感謝申し上げます。私は学部時代から専攻を大きく変えて地球惑星科学専攻に進学しました。当初は新しい分野で右も左もわからず、知識やスキルも無いに等しい状態でしたが、人一倍時間をかけながら日々の課題に取り組み、努力する姿勢をとり続けたことで結果的に良いものを得ることができたと思っています。また、私のテーマのような実験系の研究は“Try and Error”の繰り返しになります。その中で明らかになった事を抽出し、未知の領域を切り開いていくことの楽しさを知れたことは大きな収穫です。日々の研究やゼミでの議論、学会発表を通じて、2年前の自分と比べ様々な部分で成長できたかと思います。この2年間で培った経験を生かして今後も日々精進していきたいです。
葛立恵一さんのコメント
この度は、修士論文賞をいただき大変喜ばしく思います。学内外の先生方や研究室の先輩方など、研究生活でお世話になりました皆様のおかげで本賞の受賞に至ったことは間違いなく、皆様には深く感謝申し上げます。特に指導教員の河上哲生准教授には、研究内容はもちろん、研究の意義や科学者としての姿勢に至るまで数えきれない指導をいただくことができました。研究方針に悩んだこともありましたが、徹底して論理的な指導のおかげで課題を冷静に捉え研究を続けることができました。論理的に課題を乗り越えた経験は、他大学での分析や学会での発表などの経験と合わせて、今後の人生に役立つと確信しています。人間的に成長できた研究生活であったと実感しており、このような刺激的な環境で2年間を過ごせたことに深謝したいと思います。
平成29年度受賞者
地球物理学教室
- 萬年 隆裕:海洋混合層中の乱流が粒子状物質の沈降過程に与える影響
- 桂 貴暉:メッセンジャー探査機のベクトル磁場データに基づく水星の電気的性質
写真:左から、吉川裕(准教授)/萬年隆裕/中西一郎(教授)
写真:左から、藤浩明(准教授)/桂貴暉/中西一郎(教授)
地質学鉱物学教室
- 中嶋 徹:ジルコンのフィッション・トラック年代によるネパールヒマラヤの変成岩ナップとその下盤・上盤の被熱・冷却プロセスの解明
- 飯田 大貴:石英質岩の摩擦強度弱化への空気中の水分の影響
萬年隆裕さんのコメント
この度は、修士論文賞をいただき大変うれしく思っております。指導教官の吉川裕先生をはじめとする、海洋物理学研究室の皆様の助けがあったからこそ、修士論文の完成までたどり着くことができました。また、修士論文および発表を審査いただいた先生方にも深く感謝を申し上げます。学部4回生から継続して、今の研究テーマに取り組んで来ましたが、その道のりは決して平坦なものでなく、方向性に思い悩むような時期もありました。しかし、指導教官の吉川先生とのディスカッションや、研究室や学会等での発表の機会でいただいた様々な意見があったからこそ、それを乗り越えられたと思っています。このような様々なコミュニケーションの場において、自分の考えを人に伝えることは非常に難しいものですが、その結果として得られる気付きは非常に大きなものでした。今後もそのような様々な方とのコミュニケーションを大切にして、精進しようと思っております。
桂貴暉さんのコメント
この度は、修士論文賞にご選出頂き大変光栄に思います。このような評価を頂ける研究ができたのも、指導教官である藤浩明先生をはじめ、度々議論にお付き合い頂いた清水久芳先生、ご指導・ご助言頂いた先生方や学生の方々のおかげです。お世話になりました皆様に厚く御礼申し上げます。私がこの2年間を振り返って強く感じることは、(自分の手に負える)問題を見つけることと、得られた結果を丁寧に解釈することが研究の両輪をなしているということです。研究をする以上当たり前のことのように思われますが、時間的制約の中でこれらのバランスをとることは想像以上に難しかった、というのが自分の実感です。これから研究活動を始められる方々は、セミナーや学会で自分の研究結果を批評してもらう際に自分の研究の立脚点にも留意して発表することで、より有意義なコミュニケーションを図ることができるかと思います。
平成28年度受賞者
地球物理学教室
- 藤原 泰:水面波の直接数値計算を用いたLangmuir循環の力学に関する研究
- 伊東 優治:GNSSデータを用いた2003年十勝沖地震の余効変動のモデル化
写真:左から、吉川裕(准教授)/藤原泰/伊東優治/西村卓也(准教授)
地質学鉱物学教室
- 門川 隆進:Three-dimensional shape distribution of small fragments by high-velocity impact experiments for simulation of regolith particle formation: Comparison with Hayabusa and Lunar sample particles
- 高塚 紘太:Plutono-metamorphic evolution of the Ryoke belt in the Mikawa area deduced from U-Pb zircon dating
- 東 佳徳:Hydrogen diffusion experiment of fluorapatite under water vapor conditions
- 門田 康弘:Metamorphic process of the Tromso Nappe in the Scandinavian Caledonides based on P-T-t history of felsic gneiss
写真:左から、東佳徳/高塚紘太/門田康弘/土`山明(教授)/門川隆進
藤原泰さんのコメント
このたびは、修士論文賞をいただき大変嬉しく思います。指導教員の吉川裕先生をはじめ、共同研究者である松村義正博士、論文および発表を審査いただいた先生方、また2年間の研究でご助力・ご助言を下さった多くの方々に深く感謝を申し上げます。研究のいちばんの魅力は、困難な問題に対し独創的に挑戦できることだと感じています。初めは先行研究一つ一つの主張を追うので精一杯で、自分の数値実験結果でも目の前にあるデータが何を示しているのか、そもそも物理的な意味をもつのか数値的誤差なのかすらも見えずに落ち込むこともありました。しかし、論文や教科書を読み重ねたり、自分の手で様々な理論計算・実験・解析を試みたりする中で、自分なりの理論・現象に対する理解や実験結果に対する感覚が身についてきました。それらをたよりに複雑なデータの山から意味のある情報を引き出せた時の喜びは、研究に従事するものの特権だと思います。そのような喜びをまた味わうためにも、今後とも努力していく所存です。
伊東優治さんのコメント
修士論文賞をいただき、大変嬉しく思います。このような評価をいただける研究ができたのは、第一に指導教員の西村卓也先生の日々の丁寧な指導のおかげです。また、私の研究を聴き、意見をくださった先生方や先輩、後輩のおかげでもあります。皆さまに厚く御礼申し上げます。私が研究を進めることができたのは、多くの先行研究に目を通すことと、ただ考えるだけでなく実際に作業しながら考えることを心がけたためです。研究を始めた当初は大まかなテーマは決まっていたものの、(今以上に)自らの研究の目標や位置付けがわかりませんでした。しかし、多くの論文を読み実際に自らの研究に適用することで、徐々に自らの研究の方向性が見えてきました。また、考えた案をとにかく試して見ることで失敗しながらも研究を少しずつ先へと進めることができました。自分で手を動かした経験は論文を読む時にも役立つ一方、論文から仕入れた方法で研究が進んだこともあり、どちらか一方が欠けると上手くいかなかっただろうと思います。
門川隆進さんのコメント
修士論文賞をいただき、大変嬉しく思います。まず、このような評価をいただけるまでの研究が行えたのも、指導教員の土`山明先生や共同研究者の道上達広准教授の丁寧な指導、また本研究を行うにあたって意見を下さった多くの方々のおかげです。皆様に心から感謝申し上げます。この2年、多くの方々と関わる機会や議論を交わす場を得ることができました。その中で研究者や学生一人一人の研究に対する気持ちや考え方といった「こころ」を感じることができ、見聞を広めることができたと思っています。自分にとって贅沢とも思えるこの充実した2年間で経験したことを今後の糧にして、これからも精進していきたいと思います。
高塚紘太さんのコメント
修士論文賞を頂き、大変嬉しく思っております。本賞の受賞は指導教員である河上哲生准教授をはじめ、共同研究者であるEtienne Skrzypek博士やご指導・ご協力頂いた学内外の先生方、学生の皆様のおかげです。お世話になりました皆様に厚く御礼申し上げます。私の研究は三河地域の領家帯に記録された複数段階の情報を、岩石学・年代学・地球化学の手法を用いて分離し、島弧地殻における火成・変成作用の発達過程を解明するというものでした。私が研究を進めていく上で大事にしていたことは、積極的にコミュニケーションをとるということです。日常のディスカッションはもちろん、学会での情報交換、研究室でのコーヒータイムの雑談…。挙げればきりがありませんが、どれも研究を進めていく上で欠かせないものでした。皆様とのコミュニケーションのおかげで、研究生活が楽しく有意義なものとなり、本賞の受賞に繋がったと確信しております。
東佳徳さんのコメント
修士論文賞を賜り大変光栄に思います。指導教員である伊藤正一 准教授をはじめとして、修士課程でお世話になった全ての方へ感謝の意を捧げます。私は学部時代から大きく専門を変えて、地球惑星科学専攻の大学院に進学しました。そのため基礎知識では周囲より劣っていたと思いますが、その反面、泥臭く時間をかけて学ぶことに関しては周りの誰よりも努力できたと確信しています。後輩たちには、がむしゃらに頑張る姿勢だけでも汲み取って頂けたら幸いです。これから博士課程へ進学しますが、修士課程での経験を生かして、おもしろい研究を展開していけたらと思います。先生方には、さらなるご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願い致します。博士課程での研究に全力で取り組むことを約束して、受賞のコメントとさせていただきます。
門田康弘さんのコメント
指導教員である平島先生をはじめ、河上先生や同研究室の先輩同輩後輩たちのサポートの下で完成した私の修士論文が賞をいただけたことを誇りに思います。研究地域が海外であるため海外の研究者ともコミュニケーションを取ることができたり、他大学での分析や学会等で多くの方々と議論を行うことができたりと、非常に有意義な2年間を過ごすことができました。もちろん研究が上手くいかずに挫けそうになったこともありましたが、私の周囲の方々(特に同輩の2人)が研究に打ち込んでいる姿を見て、何度も鼓舞されました。研究の面だけでなく人間としてもより成長できたと感じています。私の研究に関わってくださった皆さまに厚くお礼申し上げます。今後は、私も周囲に良い影響を与えつつ、より精進していこうと思います。
平成27年度受賞者
- 佐々木 拓也:化学気候モデルの力学場・化学場の特徴について
- 小池 俊貴:2010-2014年に琉球弧南西部で発生したSSEの地殻変動解析
- 石山 悠和:沈み込み帯における高圧変成岩上昇時の流体活動―三波川変成帯別子地域の例
写真:左から、小池俊貴/佐々木拓也/石山悠和
佐々木拓也さんのコメント
修士論文賞をいただき大変嬉しく思っております。指導教官である塩谷先生や論文審査の先生方、発表を聞いてくださった方々に感謝いたします。私は数値モデルのデータ解析による研究で賞をいただきましたが、この研究を通して多くのことを学びました。ここでは具体的にそれらについて書くのではなく(人により異なると思われるため)、一般的と思われることを一つだけ書きます。それは『やればやるだけ返ってくる』ということです。私は研究手法の性質上ひたすら図を描いては考えるということを繰り返していました。何百枚という図を描き、その大半は修士論文に載せない図となりましたが、図の描画や解釈で研究内容に対する理解が深まり、表現力や考察力が少しずつついていきました。表面だけをなぞるようなことをしても結果は出ないでしょうし、面白くなかったと思います。また、楽しい結果ではなくとも、意味のある結果ばかりだったと感じます。
小池俊貴さんのコメント
修士論文賞を受賞でき、大変嬉しく思います。この結果は、指導教員の西村先生をはじめ、地震予知研究センターの先生方や学生など、この2年間で関わった多くの人のおかげです。この2年間を思い返すと、研究が思ったように進まない時期が圧倒的に長く、時折研究から逃げることもありました。しかし、先生方が尽力されたおかげで、国内外を問わず多くの学生や研究者と関わる機会を得ました。その関わりの中で多くの刺激を受けたことが研究の大きなモチベーションになり、なんとか研究を続けることができたと感じています。この2年間で私が最も後悔しているのは、研究成果を多くの人に批評してもらう機会を十分に持つことができなかったことです。これについては反省し、今後に活かしたいと考えています。これから修士論文を執筆する方々は、私を反面教師として結果を多くの人に批評してもらい、悔いのない研究をしていただければと思います。
平成26年度受賞者
- 川嶋 一生:非一様薄層導体近似を用いた三次元津波ダイナモ数値シミュレーション
- 林 悠平:竜巻様渦の遷移に関する数値実験
- 増田 慧:代用電荷法的手法による山越え気流の数値計算
- 佐藤 永太郎:冷たい沈み込み帯におけるローソン石青色片岩の岩石学的特徴と役割:九州・八代地域、黒瀬川帯、箱石サブユニットの例
写真:左から、川嶋一生/林悠平/増田慧
写真:左から、佐藤永太郎/平島崇男(教授)
平成25年度受賞者
- 佐藤 佳世子:2011年東北地方太平洋沖地震本震及び最大余震における大阪堆積盆地での長周期地震動
- 中野 真帆:2009年パダン地震が引き起こした崩壊性地すべりの地形・地質的特徴―古期風化帯に載った降下軽石堆積物の風化と地形発達史から見た崩壊の発生場―
- 山田 圭太郎:別府湾における過去3000年間のイベント堆積物
写真:左から、余田成男(教授)/中野真帆/佐藤佳世子/山田圭太郎
平成24年度受賞者
- 遠藤 寛也:静止気象衛星MTSAT-2,Fengyun-2Eを用いた雲粒有効半径算出手法の開発
- 中村 紗都子:THEMIS衛星データを用いた電磁イオンサイクロトロントリガード・エミッションの解析
- 穂積 裕太:国際宇宙ステーションからのリム方向撮像観測による地球超高層大気プラズマ構造の研究
- 土谷 成輝:Multiple growth timings of garnet recorded in an eclogite and its prograde /P-T/ path deduced from inclusion minerals in garnet from the Kotsu area of the Sanbagawa metamorphic belt, eastern Shikoku, Japan
- 東野 文子:Chlorine-rich fluid activity during granulite facies metamorphism in the continental collision zone- An example from the Sor Rondane Mountains, East Antarctica
写真:左から、遠藤寛也/中村紗都子/穂積裕太
写真:左から、河上哲生(助教・当時)/東野文子/土谷成輝/平島崇男(教授)
平成23年度受賞者
- 吉田 健太:Fluid inclusions with high Li/B ratio found from the Besshi district of the Sanbagawa belt : their chemical and petrological characteristics and implications
- 大谷 真紀子:大規模準動的地震発生サイクルシミュレーション
- 谷口 藍奈:衛星搭載マイクロ波放射計降雨推定における地形性降雨判別手法の開発
- 廣瀬 成章:津軽暖流渦の発達・衰退の力学過程における短周期擾乱の役割についての研究
写真:左から、平島崇男(教授)/吉田健太
写真:左から、廣瀬成章/大谷真紀子
平成22年度受賞者
- 原田 裕己:かぐや衛星観測によって見い出された電子・イオンの"gyro-loss" 効果
- 原田 昌:f平面二層浅水系におけるジェットからの重力波放射について
- 瀧口 正治:茨城県沖で繰り返し発生する海溝型大地震の広帯域強震記録を用いた震源過程の推定と比較
- 中村 文:Estimation of the behavior of fluid and melt during high-temperature metamorphism by focusing on elements with various diffusivities
- 牲川 菜月:Theoretical and experimental study on the formation of stable phase crystal under the Ostwald's step rule
写真:左から、原田裕己/原田昌/瀧口正治